リーマンブラザーズの破たんについては、思惑も含め多くの論議があるところである。昭和大恐慌に対するルーズベルトの政策は、ニューデール政策ばかりが目立つ、ルーズベルトの経済対策を教えられてきた。不況になると公共投資をして、景気を回復させるという魂胆である。田中角栄以来、好景気でも公共投資をするように日本はなってしまった。
ルーズベルトの、ニューデール政策は一見成功したかに見えるが、実はその後に起きた太平洋戦争の拡大がこの政策の評価を見えにくくしてしまったのである。戦争によってアメリカは、景気を回復したのである。戦争こそ最大の公共投資というわけである。
しかし、この前に行われた重要な法案がある。グラス・スティガール法の実行である。この法の主たる目的は、銀行業務と証券業務の分離である。何しろお金をたんまり持っている銀行が、株取引をやったのが、昭和大恐慌ということである。それに歯止めをかけたのが、グラス・スティガール法である。1933年のことである。
近年になって、証券の取引が複雑多岐になり、アメリカはグラス・スティガール法を1999年に撤廃したのである。少なくとも66年間は、銀行の我が侭を抑え込んできたのである。グラス・スティガール法の撤廃を受けてリーマンブラザーズのような、投資銀行の出現となったのである。要するの、マネーゲームだけをやるような銀行が出来て、実体経済とは無関係に巨額の富を得るようになったのである。
一昨年起きた、金融危機の本質はマネーゲームにある。それを許したのが、グラス・スティガール法の撤廃である。麻生太郎は、日本が真っ先に世界普及から脱出したと、大見えを切った。一時持ち直したのは、公金を大量にばら撒いたからであるが、この発言彼自身が金融危機の本質をつかんでいないことを証明しているにすぎない。実際、日本は最もこの危機からの回復が遅れている。自民党は、民主党の対策がなっていないと主張するし、民主党は自民党の尻拭いと主張する。
公共投資依存の経済実態を作り上げてきたことを、強く反省しなければならない。そのことは、へき地の産業や農業をみると良く解る。実体のない経済は、いずれ破たんするのである。公共投資による景気対策は、国家に無限の金がある事が前提である。国家も破綻する。
「始まっている未来」宇沢弘文、内橋克人著 岩波書店を参考にして