アメリカのオバマ大統領が、今年始めに牛肉の大幅な輸出方針を打ち出した。それを受けて、ビルザック米国農務長官が来日した。8日に農業通でない赤松大臣にお願いに来た。政権も変わり、少し腰が低くなったようである。従来の20カ月以下の制限要求を、30カ月とトーンダウン してきた。赤松大臣は拒否した。
アメリカで03年12月にBSEが確認されて輸入中断され、05年に条件付きで輸入が緩和されてきた。しかしながら、この5年間で13回もの危険部位の混入があった。この事実1つだけでも、いかににアメリカに対応能力がないかが分かる。多くのメディアは不誠実な対応と表現するが、現実にはアメリカのと場や、精肉処理場ではこのような細かいことには対応できないのである。
アメリカの精肉生産の杜撰な実体は、極めて安価なと場従業員を雇用していることからも分かるように、民間経営であるからやむを得ない面がある。アメリカ国民は、主食とも言える牛肉は安価であることが第一条件なのである。畜産業者ですら、BSEの発生実態を知らないし、興味 すら持ってはいない。
日本の牛には全てに耳標が取り付けられている。個体管理は即座に分かるようになっている。経歴を追跡できる、トレイサビリティーと呼ばれるシステムである。ヨーロッパのオランダなどではある程度の、個体管理がなされているものの、アメリカでは皆無である。年齢を大きさや肉質や歯の様子で類推するのがせいぜいである。
BSEの発生頻度は交通事故以下であるとの、不見識な発言が時折なされる。これは待ったこことなる実状を比較する無意味なことである。交通事故や飛行機事故は、発生するとその原因が特定できる。よほどのことがない限り原因の究明は可能なのである。BSEは未だにその原因が究明されていない。科学的な原因なども分かってはいない。そのための検査であり、個体識別の導入であった筈である。事故の確率を論議するのは、興味恩威の実情を知らない風評に類することである。
米国産牛肉は、豪州産に取って代わられている。そのオーストラリアは、トレイサビリティーの導入に向けて動き出してきている。当分アメリカの牛乳は漫然とは日本に入ってこないことだろう。