尖閣列島の漁船拿捕事件は、最悪のタイミングで起きた。一つは民主党党首選挙の真っ最中であったこと。そのため、親米右翼で嫌中派の前原国交大臣が、状況判断もなく混乱の中、ナショナリズムを掲げほぼ単独で突っ走ってしまったことである。もう一つは、中露が、接近の真っ最中であったことである。中国がパイプラインを引き、ロシアの石油を買い付ける話の直前、メドベージェフの訪中寸前であったことである。
ロシアは、第二次世界大戦の65周年記念行事を行っているが、それに中国をまんまと抱き込んだ。65年も中途半端であるし、終戦記念日もいい加減であるが、中露は日本を悪者にすることで団結できたのである。メドベージェフは、旅順に行って日露戦争の、ロシア人の犠牲者に花束を捧げた。日清、日露戦争の犠牲者同士が、大陸への侵略国日本の悪事を演出して見せたのである。
数年前までは、ロシアに経済的援助をちらつかせるだけで、北方領土問題を自分たちも考えているかのような姿勢を日本に見せていた。ところが経済的に立ち直ると様相は一変した。日本から技術的にも資本的にも、援助や協力が必要なくなってきたのである。ロシアから見ると、日本は覇権国アメリカに依存する国家として成長してきたが、今や相対的にアメリカの存在が小さくなり、日本は衰退国家として映っている。協力関係を結ぶ相手としては不足なのである。
本気かどうか解らないが、メドベージェフは中国の帰りにサハリンによった。その足で北方領土を訪れると表明して、天候の関係で中止した。日本の反応を見るだけで本気かどうか疑ったが、どうやら本気のようである。ロシアは北方問題(領土問題)で、すっかり強気になった。ここには領土問題があると、日本が明言したからメドベージェフはそれを否定するつもりなのだろう。
自民短期右翼政権が続く中で、日露関係が一向に進展することなく、ロシアは離反していったのである。その一方で済成長を続ける中国の台頭こそ、国境を接するロシアにとって手を結ぶべき相手となってきた。エネルギーを国家統制としたロシアは、中国にとっても格好のパートナーとなったのである。
中露両国は、深刻な少数民族問題を抱える国家でもある。国家として少数民族への対応も、武力的であり共通のテロ問題を抱える。同時に国境問題も両国の抱える問題である。言論弾圧も共通する。ロシアでは反政府ジャーナリストはことごとく暗殺された。中国はインターネットをはじめとする言論弾圧が絶え間ないく、民主化封じ込めも徹底している。共通する問題が多く、上海機構ののメンバーでもあり、対米への強い反感意識もある。
日本の世論は総じて、中国ケシカランと反中国的である。かといって、中国製品不買運動すらできない現状にある。100円ショップ不買運動、加工食品不購入運動と同義語になり、社会的弱者たちをまきこむことになり運動なるわけがない。中国に対して何も出来ないのである。
尖閣列島の問題は、いずれ起きたであろう問題で、水面下で進行していたことがこの機会に露呈しただけである。外交下手の日本政府であるが、民主党政権になって一層深刻になった感がある。