生物多様性の保護、環境の保全、温暖化対策など柔らかく明るい言葉が、新聞紙面やテレビ報道などで踊っている。どうもその多くは一面的な評価の事が少なくない。昨日の報道で、熱帯雨林を守るために、インドネシアを撤退して世界に木材を求めると、建築業者が方針を述べていた。
確かに、彼らが撤退した熱帯雨林はある程度の伐採が抑えられることになるだろう。その結果彼らは、世界のあちこちに木材を求めることになる。インドネシアより近いところはない。しかも量が少ないために、価格を抑えようと業者も対策に苦慮している。とのことである。
日本ではログハウスが盛んに建てられている。多くはフィンランドの、針葉樹が用いられている。まっすぐで加工し易いとのことである。ログハウスは環境にやさしいような手触り感がある。
これらの二つのことは全く、思惑と異なる行為であると言えるのである。熱帯雨林を少し守ったところで、遠くから運んでくるようだと運搬に係わるエネルギーのロスと、不要なCO2を排泄することになる。遠くから運ぶことで、近くの森林を利用しないことにもなる。
材木利用に関しては食料のフードマイレージに準えて、ウッドマイレージという評価がある。フィンランドからの木材で建てたログハウスを、国内生産の木材で対応すると、ウドマイレージは10 00分の1になると試算されている。
日本の木材自給率は、20%足らずである。我が国は先進国には珍しい、森林国家である。国土の70%を森林が占めている。海外の木材を輸入することは、日本の森林を野放しにして国内の木材産業を蔑ろにするのである。
マレーシアの熱帯雨林を守るために新たな海外の森林伐採をして、ウッドマイレージを高くして長い距離運搬することが これからの時代に沿ったものだとはとても思えない。環境問題を特定のキーワードの指示だけに依拠して、方針を検討することは全体を見落とすことになる。
環境にやさしい木材住宅を建てるのであれば、原料木材の運搬はもちろん森林環境についても検討しなければならない。熱帯雨林の伐採を止めても、より遠距離から新たな森林を伐採するのであれば、何の意味もない。我が国の木材産業を衰退させ、森林環境を悪化させるのである。生物の多様性とは、環境視点の多様性も必要になるのである。