北海道の知床半島が、世界遺産に指定されて4年経つ。ひと時はブームのようなものがあってかなり観光客も増えた。関係者は大喜びであるが、これは本来の趣旨ではないはずである。最近は、不況もあって観光客は減少しているようである。
知床が世界遺産に選ばれた大きな点は、海と山のつながりである。流氷がこれに大きく関わっている。知床半島は流氷の南限地域である。しかし、それより北に連なる千島列島も類似の条件を持っている。そこで、知床半島の世界遺産の認定地域を拡大してはどうかというのが、 「日露平和公園」構想である。しかしここには大きな問題が立ち塞がっている。言わずと知れた北方領土の領有権である。
平和公園構想は、日本地域からは知床半島を、ロシア地域からはウルップ島をいれ、その間に北方四島を含めるのである。環境にも野生生物にも国境などない。同じ環境の一部分だけを世界遺産に指定しても意味がない。それを真剣に提案している団体がある。http://www.sea-otter.org/index.html
少し前までは、北方領土は戻ってこない方が自然が保護される。漁業資源が守られるといわれていた。が、ソビエトの崩壊以後一旦は経済的に窮地に陥った北方領土地域は、プーチンバブルで事情は全く異なってきた。
ロシアの辺境の地も開発が急に進み、漁業資源もほとんど規制などない乱獲で、日本などに輸出されるようになってきた。このままだと、日本と同じ状況になるかもしれない。むしろ開発を望んでいる地域にとってはずっと待ち望んできたことであり、歓迎させるべきことなのである。このままでは、日本と同じ状況に落ちってしまう。
こうしたことを背景に打ち出された「日露平和公園」構想は、国境などない野生生物にも自然環境にとっても全く新たな視点を持った、救済策になるものと思われる。昨日提唱者の一人の、毎日新聞の本間記者の講演を聞いた。夢で終わらせたくないとの熱い思いが伝わってきた。
合わせて「知床・北方四島」大泰司紀之、本間浩明共著岩波新書1,000円+税。写真も豊富な本も併せて読むと一層興味深い。