進化遺伝学者アダミ・ラザードは自著「ゲノムが語る人類全史」(文藝春秋社刊:2250円)で、「遺伝学的には人種間よりも人種内の違いの方が大きい」と述べている。人種を遺伝学的に規定することは困難であると述べている。
民族や人種とは長い年月(生物学的には極めて短時間ではあるが)を経て、共通の文化や言語や文字を獲得した集団であり、多くの場合近代になって国家を形成することになる。そうして形成されたのが、民族や人種である。遺伝学的には、そうした人種は文化や言語など気候風土が育んだ、後天的な獲得形質に過ぎない。
まるでジョンレノンの、イマジンの言葉の世界を科学的に証明された感がある。民族主義は安倍晋三など国粋主義者にとって、日本は大和民族の単一国家でなければならない。自ずと排他的民族主義者となり、韓国や中国を嫌い大和民族の誇りを鼓舞する。
今日、旧国鉄の400勝投手、カネヤンこと金田正一こと氏が亡くなった。彼は在日韓国人である。戦後日本のスポーツを支えた力道山、王貞治、張本勲、大鵬たちは大和民族ではない。我々は彼らの活躍にここを躍らせたものである。芸能界や経済界でも多くの在日韓国人を主とする、大和民族とは言えない人たちが私たちを喜ばせてくれたものである。
今行われている、ラグビーワールドカップ杯の日本チームの半数近くが、大和民族ではない。前回も書いた多様な民族の日本を象徴する、大阪なおみやサニーブラウンたちは奇妙に母が日本人で父が中南米の人だったりしている。日本語すら話せないのもいる。次第にこうした現象に国民は違和感を抱かなくなってきている。民族や人種などというものは、仲間意識の延長でしかない。
しかし、安倍晋三の行っていることはこの真逆である。近隣諸国を見下し危機感を煽り作り上げる。日本は優秀な単一の大和民族として、日本は天皇を抱くを神の国として、愛国心を鼓舞し、国益を前面に出して国威発揚を煽る時代ではない。安倍晋三や日本会議などは古色蒼然としたナショナリズム国粋主義を掲げ、国家に身を捧げる憲法草案など許されるべきではない。
民族や人種は、国家権力などが築き上げた虚構の概念でしかない。今その概念すら崩れつつある。愛国心などは故郷を思う程度に届め置ばいい。