ひとケタ台に落ちたとはいえ、依然堅調な経済成長を背景に中国は世界各国でしたたかな外交を展開している。先頃、国家財政が破たん寸前に堕ちっているギリシャに経済支援の手を中国は差し伸べた。今また中国は、フランスに原発の建設を発注し、さらに大型経済提携を展開している。
フランスは人権に敏感な国家である。中国の民主化と民族弾圧に強く抗議する、少ない国家でもあった。それが今回の胡錦濤国家主席の、経済支援に全く口を閉ざした。劉曉波のノーベル平和賞受賞問題で、中国に抗議するのではないかとみられていたが、だんまりである。アメリカ民主党も結局は、民族問題や人権問題には触れることがない。
胡錦濤は翌日に、EUでギリシャに次いで経済破綻が見込まれるポルトガルを訪問し、国債の購入などをして経済支援を約束している。中国には、国営以外のメディアがない。中国のメディアはこぞって、胡錦濤の一連の海外支援を大きく報道している。中国外交に、ほとんど日本は存在しない。更には尖閣問題など意に介さない状況にある。意に介さないというのは、日本の動きや意見など眼中にないということである。
中国は前世紀に、ヨーロッパ各国から侵略された国家である。同じように侵略され植民地化されたアフリカは、こうした歴史を共有している。中国はアフリカで強大な経済基盤を構築しつつある。世界戦略に最も大きな障害になるアメリカや日本のブレーキとして、北朝鮮を野放しにして支援をしている。北朝鮮をいいように、外交戦略の道具として中国は利用しているのである。
最近の中国のしたたかな外交は、経済発展を動力にしているが、ハンドル操作は一党独裁体制の共産党である。こうした背景を持ち中国は、はブレることがなく、必要なところに必要な手段を絶妙のタイミングで手を打ってくる。
翻って我が国の外交を見ると、ビデオ流出犯人の追及をしたり、ことの本質に触れくことなく大臣たちが「遺憾」を繰り返し、無策のまま経過するだけである。これが果たして外交か?内政では何の前触れもなく消費税やTPPをうちだしたり、絶対に無罪となる男の微罪を国会で追及しようとする、無為なことばかりが目立つ。毎年首相が交代する国家には無理な話かもしれない。今更TPP参加を検討しても、傷が大きくなるばかりである。