ベルグソン全集3(白水社)、「持続と同時性」を読む。
ベルグソンと和辻哲郎をつなぐ「ことば」は「直観」である。ベルグソンは「直観」と同時に「直接」ということばの方を好むかもしれない。アインシュタインの理論に触れながら、「知覚」について、こんなことを書いている。
人が走るとき、人が地球の上を走るのだが、これは他者から見れば人の足の下を地球が動くととらえることもできる。これはもちろん物理(数学/論理)の可能性の問題である。しかし、実際に走る人(行為する人)は、自分の行為を「直接」知覚している。この知覚は意識と呼ぶこともできる。それは「内的絶対性」であり、「事実」である。運動する人(走る人)にとって、これはその人の内部で起きる「直接」の感覚(知覚)であり、この「直接」は「確実」であって、ゆるぎがない。
そして、この「直接」こそが「持続」していくものである。だれにも「介入」されない「持続」というものがあり、そこから「連続」も生まれる。
「直観」も誰からも「介入」されないものである。この直観を持続させ、そこから連続した世界を新しく描き出すことができるかどうかは、「ことば」の問題になってくるが、ことばにできなかったからといって「直観」が存在しなかったことにはならない、というようなことは、ベルグソンが書いているのではなく、私の付け足しなのだが。
私の「ことば」が、いったい誰からいちばん影響を受けているのか、誰のことばの影響下で動いているのか、それを見極めるのはむずかしいが、私には何人かの大好きな著述家がいる。そのひとりがベルグソンだ。もちろん私はベルグソンをフランス語で読んでいるわけではないので、そのことば(翻訳)をどこまで動かしていいものなのかわからないが、「わからない」からこそ、私は「自由」にそれを動かしていく。
「内的直観(内的直接生/内的直接知覚)」によるものだけではないが、運動はどのような運動であれ、加速する。(減速する、ということもあるだろうけれど。)この「加速」を支えるものはなんだろうか。「直観」といえば「直観」なのだろうが、それが「連続」につながるとき、そこには「構想力」が働いている。「直観的」に方向が存在する。この方向をベクトルといえばいいのか、ゲシュタルトといえばいいのか、私は知らないが、ゲシュタルトというのは新しいことばのようであって、意外と古いのだなあと感じたりする。和辻がどこかでつかっていたと記憶しているが、どの本だったかはっきりしない。
少し脱線したが。
運動を客観的に把握するだけではなく、「行為する人」の側からとらえなおすとき、そこにはどうしても「肉体」が介在する。「行為する人」を設定し、そこに「内的直接知覚/内的絶対性」を仮定する(想定する/想起する?)ベルグソンの考え方は、私には、和辻に似ていると思う。
書かれている「対象」は違うのだが、「行為」に起点を置くというのが、似ている。
和辻はいつも「行為」を見ている。「行為」を見るとは「人格」を見るということでもある。そこから「倫理」、あるいは「道」の問題が始まるのだが、そのことを私はベルグソンの文章をとおして「確認」するのである。
ベルグソンのいう「直接」は、私にはまた「即」に通じるように思える。つまり、それは道元につながる何かがあるように「直観」する。
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