詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

こころ(精神)は存在するか(12)

2024-02-15 17:43:38 | こころは存在するか

 ベルグソンは書いている。

ただ一つの実在的時間が存在し、他のすべての時間は虚構の時間である。

 「実在的時間」は「生きられた時間」を言いなおしたものである。個人個人によって「生きられた時間」だけがほんとうの時間であり、そのほかは虚構の時間である。
 私はこれを利用して逆に言いなおす。「実在的」とは「生きられたもの/体験されたこと」である、と。「実在的ことば」とは「生きられたことば」であり、その対極に「虚構のことば」がある。「実在的肉体(ベルグソンは、実在的身体、と書くかもしれない)」は「生きられた肉体」であり、その対極に「虚構の肉体」である。
 「虚構のことば」「虚構の肉体」であるにもかかわらず、私がそのことば、肉体に反応するとすれば、それはその虚構のなかに私の「体験」を直観するからである。実感するからである。

 また、こんなことを書いている。

「空間の剛い図形こそその諸条件を光の図形に課する」(略)。この命題を逆にして次のように言うことがある。「光の図形こそがその諸条件を剛い図形に課するのである」と。換言すれば、剛い図形は実在そのものではない、それはたんに精神の構造物にすぎない。

 「逆にして、言う」、つまり言いなおす。このとき、動いているのは「精神」であるが、精神が動くときは「肉体」が動いている、移動しているのである。肉体が「基準点」を変える。つまり「立場」を変える。
 「精神」あるいは「こころ」は存在しないと私は考えているので、そう「誤読」する。
 「精神の構造物」とは「ことばの構造物(ことばの運動が描き出す存在)」である。

 ここから、私は、きょうこんな詩のメモを書いた。

 Aにおいて枯れたバラ(虫食いのバラの造花)と表象されたものは、Aにおける内的荒廃を生きているとBは書き留める。しかしAにおいて内的荒廃、あるいは荒廃する内面というものは存在せず、鏡のなかでネクタイを結びなおすBの背中がもはや触れることのできないものとして世界、つまり外部を構成しているという事実があることはBは知らない。
 このことに関して、バラの造花が銅製であり、無着色のものであることに注目し、そこから別の注釈を試みた詩人がいたことを指摘しておく。
 一方、この私的に対して、詩人は次のように反論している。
 同じ物語はAとBによって、同じ空間、同じ時間に歪曲されることによって、その内部にとりかえしのつかない実在的時間が蓄積される。
 しかし、こうやって複数に複製される事実について、当のAが「私はもう鏡をのぞかない。鏡のなかからBの、私を見つめ返す視線が反射してくるから」と日記に書いたことは、Bの創作である。つまり、虚構である。

 

**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、googlemeetを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(googlemeetかskype使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
1回30分、1000円。(長い詩の場合は60分まで延長、2000円)
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。

お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする