ベルグソンは書いている。
ただ一つの実在的時間が存在し、他のすべての時間は虚構の時間である。
「実在的時間」は「生きられた時間」を言いなおしたものである。個人個人によって「生きられた時間」だけがほんとうの時間であり、そのほかは虚構の時間である。
私はこれを利用して逆に言いなおす。「実在的」とは「生きられたもの/体験されたこと」である、と。「実在的ことば」とは「生きられたことば」であり、その対極に「虚構のことば」がある。「実在的肉体(ベルグソンは、実在的身体、と書くかもしれない)」は「生きられた肉体」であり、その対極に「虚構の肉体」である。
「虚構のことば」「虚構の肉体」であるにもかかわらず、私がそのことば、肉体に反応するとすれば、それはその虚構のなかに私の「体験」を直観するからである。実感するからである。
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また、こんなことを書いている。
「空間の剛い図形こそその諸条件を光の図形に課する」(略)。この命題を逆にして次のように言うことがある。「光の図形こそがその諸条件を剛い図形に課するのである」と。換言すれば、剛い図形は実在そのものではない、それはたんに精神の構造物にすぎない。
「逆にして、言う」、つまり言いなおす。このとき、動いているのは「精神」であるが、精神が動くときは「肉体」が動いている、移動しているのである。肉体が「基準点」を変える。つまり「立場」を変える。
「精神」あるいは「こころ」は存在しないと私は考えているので、そう「誤読」する。
「精神の構造物」とは「ことばの構造物(ことばの運動が描き出す存在)」である。
ここから、私は、きょうこんな詩のメモを書いた。
Aにおいて枯れたバラ(虫食いのバラの造花)と表象されたものは、Aにおける内的荒廃を生きているとBは書き留める。しかしAにおいて内的荒廃、あるいは荒廃する内面というものは存在せず、鏡のなかでネクタイを結びなおすBの背中がもはや触れることのできないものとして世界、つまり外部を構成しているという事実があることはBは知らない。
このことに関して、バラの造花が銅製であり、無着色のものであることに注目し、そこから別の注釈を試みた詩人がいたことを指摘しておく。
一方、この私的に対して、詩人は次のように反論している。
同じ物語はAとBによって、同じ空間、同じ時間に歪曲されることによって、その内部にとりかえしのつかない実在的時間が蓄積される。
しかし、こうやって複数に複製される事実について、当のAが「私はもう鏡をのぞかない。鏡のなかからBの、私を見つめ返す視線が反射してくるから」と日記に書いたことは、Bの創作である。つまり、虚構である。
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