イタリア人青年と読む三木清。
「秩序について」は、散らかった書斎から、外的秩序と内的秩序の違いから書き始める。
途中から、経済、物理、国家(体制)を経て、最後の一段落は「人格とは秩序である。」という短い文章ではじまる。この「人格とは秩序である。」にことばを補うと、どういうことばが考えられるか。
私の質問は、かなり抽象的な質問なのだが。
彼は「人格とは心の秩序である」と、ほとんど即座に答えた。
びっくりしてしまった。同じように即答できる日本の高校生が何人いるだろうか。50人にひとりくらいかもしれない。選択問題なら、答えを選べるが、自分でぜんぶ考えないといけない。
途中に「今日流行の新秩序論」ということばがあって、これは三木清が生きた時代を知らないと説明がむずかしいのだが(私は歴史が苦手で説明に困るのだが)、彼は東条英機を知っている。二・二六事件まで知っていて、クーデターが成功していたら日本は違っていたかも……などと私よりも歴史に詳しかった。
日本の高校生、ムッソリーニを知っているかな?
さらに、N2検定に合格したイギリス人の作文には問題が多かったのだが、その文法的間違いを直しながら、さらに文章を分かりやすくするという課題も75%クリアできた。
「民主主義国は包含的な考え方は一番大切ながいねんだと思います。」を「民主主義国は包含的な考え方をすることは一番大事だと思う。」と直した。「包含的」は、ふつうの日本人はつかわない。漢字を見れば意味は想像できるが、日常の会話でつかうと、きっと通じない。イギリス人が言いたかったことを、「包含的」をつかわずにほかの言い方で言い直せるかと質問してみたら。
「多様な(考え方)」とぱっと答える。
ちょっとではなく、とてもすごい、と私は思う。