詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

竹内健二郎『四角いまま』

2020-01-19 14:30:36 | 詩集
竹内健二郎『四角いまま』(ミッドナイト・プレス、2019年12月25日発行)

 竹内健二郎『四角いまま』の「あくび」。

プラットホームで
男は
鼻からけむりを
大きく吐き出し

くび をはじめた

 「あくび」とひとことにするのではなく「あ/くび」。その一呼吸のずれが、男を見ている感じを端的にあらわしている。あくびをするときも「あ」と肉体の中からおさえきれないものが漏れ、それにかたち(あるいは意味)を与えるようにして、残りの息が追いかけてくる。
 これを竹内はさらに言い直している。

閉じられていく まぶた
開かれていく くちびる
開きながら閉じていく ひとの身の

どこかに
男は

吸い込まれてしまったようなのだが

 さて、吸い込まれたのは「男」か、「男」を見ている竹内か。あるいは、この詩を読んでいる私か。
 見ること(読むこと)は自分の肉体をつかって、「事実」を反芻することである。くりかえすことによって「肉体」のなかで「事実」が「真実」になる。
 そこには「あ/くび」のように、ちょっとことばにしにくい「間」のようなものがある。「間」を「意味」にしないで、「間」のままにしておくと、それは「魔」に変身するだろうと思う。
 どうやって「意味にしない」か。
 これは難しい。





*

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