小松宏佳『崖』(紫陽社、2024年09月01日発行)
小松宏佳『崖』の表題作「崖」の最後の部分。
それら経験の底には
崖の機嫌が横たわっている
うふふ、をやっていこう
冬だから怖いのよと言いながら
大股で近づいてくるのは
崖から見ても
わくわくするものだ
「うふふ」と「わくわくするものだ」の呼応がおもしろい。「わくわくする」ではなく「わくわくするものだ」と「ものだ」をつけくわえているのが、ちょっとさめていて、それもいいかもしれない。
ことばの動きが、荒川洋治っぽいなあ、と思った。こういうのは「印象」にすぎなくて、だからどうなんだといわれたら、別に何かを言いたくて言ったわけでもないので、説明のしようがない。
ほかの詩にもそういうものはあるかなあ、と思い、ぱらぱらと読んだが、ぱらぱらがいけなかったのか、みつからなかった。
でも、この詩集のなかでいちばん魅力的なのは、私が引用した数行だろうなあ。そういう数行、あるいは一行でもいいが、それがあれば詩集は詩集として成り立つと思う。
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