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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

新約 とある魔術の禁書目録 第10巻 感想

2014-05-12 19:40:24 | 超電磁砲/禁書目録
なに~、そう来ましたかー!
って感じで、8巻から続いたオティヌス編が完結。

いやー、まぁ、9巻のあとがきの最後で、既に、オティヌスの盛大なデレ!は予告されていたので、それは全然いいのだけど、

正直、え?、それでいいの?っていうのが読後の第一声かなー。

まぁ、何を語ってもネタバレになるから、いつもどおり、スペース、空けときます。















































うん、ちょっと正直、どこから書いていいか戸惑っているのだけど、最初に、一番デカイ話からしてしまうと、

あー、これをやりたかったから、「新約」ってつけて、仕切り直ししたのね、

ということかな。

要するに、「赦し」、あるいは、「救済」、というテーマを前面にだすために。

何しろ、この10巻は、8巻から続いたオティヌス編三部作の完結編であるだけでなく、「新約」に入ってからの物語の集大成でもあるので。

(まぁ、という割には、実は、木原一族というか、学園都市の動きが後景に退いていたのだけど、その話はまたあとで。)

結局、オティヌスって何なの?何したかったの?ってことがずっと大きな謎としてあったわけで、その真意は一応前巻で上条ちゃん(と読者)には明かされたわけだけど、作中世界では全く伝えられていなかった、だから、本巻の最後で大統領が行った演説、つまり、オティヌスを「抽象的な、いわば宗教的な悪なる存在」ではなく、もともと人間であった一人の存在として「裁く」あるいは「赦す」ことを説く演説が、素晴らしく聞こえるわけで。というか、読者も含めた、禁書目録世界の総意としてのオティヌスへの、赦しの抱擁だよね。

なんていうのかな、もはや上条ちゃんの正義の話ではなく(それは9巻で既に否定され、乗り越えられている)、禁書目録世界での、多様な正義の存在の下での正義・・・、というか、救済、の話なんだよね。

だから、今回の、上条ちゃんとオティヌスの、デンマーク巡礼の旅も、一見すると、一つ一つは、ガチで禁書目録キャストの、聖人とかレベル5たち「有段者」によるガチバトルの再演なわけだけど、結局、その過程で、それぞれの立場に応じた「赦し」の形を示していく過程だったんだよね。

まぁ、その中でも白眉なのは、やっぱり美琴による、総体ちゃんと異なる激励なんだけどね。あそこは、上条ちゃんと立場が逆転して、美琴が上条に活を入れるところだからね。

そう、だから、なんというか、多様な世界のあり方をつまらないイデオロギーでモデル化するなよ、ということを、ラノベ的文脈で表現したらこうなりました、って感じかな。

なんというか、「上条は英傑ではない」という命題にとことんこだわった、というか。

つまり、英傑/英雄ではない男の子によって、窮地にある女の子を、各人各様にカスタマイズして救済していって、それらをボトムアップで積み上げていったら、どんな「正義(ホントは正義もどき、ぐらいだけど)」が描けるか、というのが、この「新約」に入ってからの大きな構成だったんだなー、と思うんだよね。

そういう意味では、木原加群、という存在も、先行した一つの回答だったんだよね、オティヌス的存在の学園都市版の末路として。

こんな風に考えてくると、「新約」というのは、見た目は完全に北欧神話モチーフなんだけど、でも、やっぱり新約聖書をどこかしらモチーフにしていたんだろうな、と思うわけですよ。上条/オティヌスコンビが苦難を乗り越えていく話として。最後には、死と再生も経験しているわけで。


・・・とはいうものの、いやー、実は、10巻も200頁を超えるあたり(つまりは半分)までは、何か、思ってたのとは違う、これじゃ、RPGのステージクリアみたいじゃないか、と思ってたのね。何しろ、一通さんを始めとして、道行く先々でかつて拳を交えてその後に理解を重ねた「強敵(トモw)」どもが刺客として現れるわけだから。てか、また、一通さんとバトるの?とか思ったわけですよ。いまさら、アックアかよ、とかね。

そういうオールスター総出演が、一種の当番回みたいに、各人に割り当てられていくのが、読み進めるには単調だったわけで。だって、神裂火織のところなんて、マジ、反則じゃない。手心加えてる、なんてレベルじゃなくて。やっぱ、本気で上条ちゃんには刃は向けるわけないよね、と。一通さんにしても、アニェーゼにしても。

ところが、だんだんと納得できたのは、上条ちゃんの武器は、別に幻想殺しだけではなく、言葉責めによる戦意喪失、武装解除、あるいは味方への籠絡w、という「無効化力」による「戦況改変力」にあることが見えてきた。

しかも、それが「上条は英傑ではない」という前巻で確立された見方によって、今まで感じてきたような「説教」ではなくなっているんだよね。

もっとも、その分、実は物語としては、わかりにくくなってきてるとは思うのだけど。

まぁ、だから、作者自身が、あとがきで、各章ネタバレの解説なんてつけてしまって、ここでは何を描きたかったかという「作者の意図」を直接示さなければならなくなってきてると思うのだけど。

なので、オティヌス編が終わってしまった今、ちょっとこの先の展開が不安にはなるんだよねー。

だって、最後に、なんか、世界中の神様登場!、みたいなことになって、ドラゴンボールも真っ青な、世界観のインフレが起こっているわけじゃない。

もう、魔術でも科学でもなんでもない世界。

まぁ、ラスボス?としてのアレイスターがようやく前面に出てくる、ってことなんだろうけど。

逆に言うと、こんな「神々との闘い」みたいなフェーズが次に来るのを用意するために、無理矢理オティヌスを、デレさせて、ダウンサイズさせて、学園都市に常駐させるようにしたんじゃないかな、と思うんだよね。

上条勢力の次なるバトルは頂上神たちとの闘いである、って感じで。

たださ、オティヌスが結局、身長15センチの妖精さん?もしくはフィギュアになった展開とか、あれ、これ、ストブラの錬金術士じゃね?とか、

世界中の神々を相手にする、って、カンピオーネとかハイスクールD×Dとか、で出てきてるネタじゃね?とか、

どうにも既視感が多くて、あれ、禁書目録も今流行の展開に逃げちゃうの?という感じがしないでもない。

もっとも、そんな陳腐化を逃れるための設定が、神々への叛逆を企てる拠点としての「学園都市」ってことなんだろうけどね。

ということで、キリスト教やら北欧神話やらを元ネタに使いながら進めてきた禁書目録世界の描写は一通り終わって、次巻以降は、ようやく学園都市の「深い闇」を扱うようになるのだろうな。つまり、なぜ学園都市は作られたのか?とか、あるいは、改めてレベル6を目指す能力開発とは何なのか?ってところに話は戻るのだろう。その過程で木原一族の思惑にも再度焦点があたったりもするのだろう。

そうやって、神々との闘い、なんて超インフレした闘いを行う段になって、トールやら聖人やら、新約になって登場した、能力インフレ怪人たちも助っ人として登場するのだろうな。あ、第7位もね。

そういう意味では、いよいよ、上条ちゃんの右腕の秘密に迫るのかもしれない。

少なくとも、本巻の最後で現れた神々なら、それを知ってるよね、きっと。なにしろ、世界そのものを創造したり、無化したり、改変したりするのは、神の力である、ということは、本巻の最後で、オティヌスに対して行った再生処置でも明らかなわけだから。


ということで、オティヌス編に決着がついて、一段落してしまった新約禁書。

次巻から、どのようにリブートをかけるのか、楽しみではある。


しかし、いい加減、登場人物多すぎだよな~w

あと、やっぱり、オティヌスは救済されるなら、等身大サイズのままが良かったかな~。

まぁ、誰にでもわかる無力化?とその結果としての彼女への刑罰の内容を考えると、ストーリー展開上は仕方ないのかもしれないけれど。なので、デレた、といっても、なんか生煮え感が拭えなかった。

いや、きっと、この先、また等身大バージョンが再登場するのだろうけどw

でも、ここらでぶっちぎりのパートナーが上条ちゃんに生まれても良かったんじゃないかな、とは思った。

そのあたりの彼女の位置づけも含めて、無理矢理、ダウンサイズされた気がするんだよねー。

そこが、今回の幕切れのところで、今ひとつスッキリしなかったところ。

あとは、バードウェイとレッサーもレギュラー化するのかな?

そういったところも含めて、キャラの整理が、そろそろ必要な気がしてくる。


ともあれ、次巻に期待。

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