日経ビジネスの最新号で、「捲土従来期すソニー 完全復活なるか」、ソニーのジレンマと言うタイトルで、ストリンガー体制のソニーの現状をレポートしている。
アップル・サムスン包囲網を崩せるかと言う問題意識だが、キヤノンも、パナソニックも、任天堂も強力なライバルであるし、ソニーの前には、前門の狼、後門の虎、と、強力な競争相手が多くて、努力しても努力しても、完全復活と言うか、経営実績の捗々しい向上は中々見えて来ない。
これまで、このブログで、私は、ソニーの凋落は、コモディティ商品ばかりの技術の深追い、すなわち、持続的イノベーションばかりに力を入れて、破壊的イノベーションによるソニー本来の他の追随を許さないような新製品やサービスの提供が出来なくなった、歌を忘れたカナリアに成り下がってしまった結果によると書き続けてきた。
この日経の記事に、私なりに感じたことがあるので、少し感想を書いてみたい。
私の手元に、ジャグディシュ・N・シース著「自滅する企業」があるのだが、第3章 傲慢症 おごれる者は久しからず の中で、「誰もまねできない製品やサービスを開拓する」会社の失敗例として、ソニーが記述されている。
家庭用ビデオレコーダー、トリニトロン、ウォークマン、オーディオCDなど、常にテクノロジーの波に上手く乗って、市場への一番乗りを続けて発展して来た。これが、ソニーを傲慢にしたと言うことであろうか。
出井体制になってからは、経営トップの絶対的権力で利益を叩き出す会社から決別したのだが、プレステで一時好成績を挙げたものの、ソニーショックを起こして、ソニーの経営悪化が、最早傲慢症の蹉跌ばかりではないことが分かったと厳しい指摘をしている。
また、スライウォツキーは、「大逆転の経営」で、ソニーは、ダブルベッディング、すなわち、競争相手の技術を追走する二股戦術を打たなかったために、アップルのiPodや、任天堂のwiiに負けたのだと分析していたが、これは、ソフト軽視と言うか製品開発と製造に重心を置いた経営である上に、トリニトロンの異常な成功が、ソニーの薄型TVへの対応の遅れを惹起したのと同様に、成功しておれば成功しているほど、コア・コンピタンスから離れられなかったと言うことでもあり、既に前世紀に、クリステンセンがinnovator's dilenmaで指摘している。
トランジスターを逸早くコンシューマー・エレクトロニクス製品に導入して、繁栄を謳歌していた真空管主体のエレクトロニクス企業を駆逐したソニーが、回りまわって逆の経験をすると言う皮肉なめぐり合わせと言うべきであろうか。
私は、ソニーショック後に、会社再建のために、ソニーが、虎の子であった筈の、最先端を行くロボット事業をトヨタに、そして、途轍もない性能を持ったセルを東芝に売却して、コモディティに成り下がってしまっていたTVやビデオなどコンシューマー・エレクトロニクス製造販売主体の会社になった時点で、ソニーの将来は、益々、暗くなってしまったと思ったし、その旨、このブログにも書いた。(この日経記事でも、セル売却を後悔していると指摘)
一番最初に実用化し販売したLEDテレビだが、商品として顧客にアピールできる価格で提供出来ずに、サムスンに先を越されたのを見ても分かるように、技術の差別化の優位性の維持が殆ど不可能なコモディティ製品の場合、ソニーのコスト競争力は極めて弱いのでキャッチアップが並大抵ではない。
アメリカの製造業復活のために、MITチームが徹底的にグローバル企業の競争および成功戦略を調査した、スザンウ・バーガーの「グローバル企業の成功戦略」において、ソニーについて、興味深い指摘をしていて、ソニーのアウトソーシングを嫌った自前調達・純血主義が時代遅れで、ソニーのコスト競争力を削ぐ要因になる可能性を示唆していた。
アウトソーシングが技術流出につながるとして、技術のブラックボックス化を維持し続けていたのだが、これは、ソニーだけの問題ではなく、今でも、日本企業の戦略戦術でもあると言えよう。
しかし、今回の日経ビジネスでは、ソニーは、ほんの数年でこの方針を放棄して、今では、特に、パソコンでは、台湾や中国の業者を巻き込んだ水平分業型モデルが定着して好成績を挙げており、このコスト効率の高いSCMシステムを、コスト競争力に欠けるテレビ事業に導入してコストを削減するのだとモノ作り復権戦略をレポートしている。
この記事では、一回りも二回りも遅れているとしか思えないようなソニーの新しい(?)モノ作り戦略を報じているが、大きな車は回りが遅いの喩えで、限界を超えて大きくなり過ぎ制度疲労してしまったソニーには、瞬発力と機動力が必須ではないかと感じている。
余談ながら、スザンヌ・バーガーは、ソニーのビッグバンとも言うべきセルを、その処理能力は世界最速のスーパーコンピュータに匹敵と、起死回生の切り札と持ち上げているが、後の祭りである。
もう一つこの記事で気になったのは、ソニーの「ソニー・オンラインサービス(SOLS)」である。
ソニーのハード製品を結合融合して、インターネットで、ソニーのソフト(映画、アニメ、ゲーム、音楽、書籍)を、オンラインで提供しようとするシステムをはじめたことである。
ハードとソフトの経営資源と製品サービスを幅広く持ったソニーの最大の強みを活用しようと言うビジネスモデルで、ソニーならの戦略だが、問題は、このグローバルなデザインやプラットフォームが当然である時代に、当分は、ソニー製品サービス間だけの計差的ななシステムであると言うことである。
この点については、コメントを次回に譲りたい。
アップル・サムスン包囲網を崩せるかと言う問題意識だが、キヤノンも、パナソニックも、任天堂も強力なライバルであるし、ソニーの前には、前門の狼、後門の虎、と、強力な競争相手が多くて、努力しても努力しても、完全復活と言うか、経営実績の捗々しい向上は中々見えて来ない。
これまで、このブログで、私は、ソニーの凋落は、コモディティ商品ばかりの技術の深追い、すなわち、持続的イノベーションばかりに力を入れて、破壊的イノベーションによるソニー本来の他の追随を許さないような新製品やサービスの提供が出来なくなった、歌を忘れたカナリアに成り下がってしまった結果によると書き続けてきた。
この日経の記事に、私なりに感じたことがあるので、少し感想を書いてみたい。
私の手元に、ジャグディシュ・N・シース著「自滅する企業」があるのだが、第3章 傲慢症 おごれる者は久しからず の中で、「誰もまねできない製品やサービスを開拓する」会社の失敗例として、ソニーが記述されている。
家庭用ビデオレコーダー、トリニトロン、ウォークマン、オーディオCDなど、常にテクノロジーの波に上手く乗って、市場への一番乗りを続けて発展して来た。これが、ソニーを傲慢にしたと言うことであろうか。
出井体制になってからは、経営トップの絶対的権力で利益を叩き出す会社から決別したのだが、プレステで一時好成績を挙げたものの、ソニーショックを起こして、ソニーの経営悪化が、最早傲慢症の蹉跌ばかりではないことが分かったと厳しい指摘をしている。
また、スライウォツキーは、「大逆転の経営」で、ソニーは、ダブルベッディング、すなわち、競争相手の技術を追走する二股戦術を打たなかったために、アップルのiPodや、任天堂のwiiに負けたのだと分析していたが、これは、ソフト軽視と言うか製品開発と製造に重心を置いた経営である上に、トリニトロンの異常な成功が、ソニーの薄型TVへの対応の遅れを惹起したのと同様に、成功しておれば成功しているほど、コア・コンピタンスから離れられなかったと言うことでもあり、既に前世紀に、クリステンセンがinnovator's dilenmaで指摘している。
トランジスターを逸早くコンシューマー・エレクトロニクス製品に導入して、繁栄を謳歌していた真空管主体のエレクトロニクス企業を駆逐したソニーが、回りまわって逆の経験をすると言う皮肉なめぐり合わせと言うべきであろうか。
私は、ソニーショック後に、会社再建のために、ソニーが、虎の子であった筈の、最先端を行くロボット事業をトヨタに、そして、途轍もない性能を持ったセルを東芝に売却して、コモディティに成り下がってしまっていたTVやビデオなどコンシューマー・エレクトロニクス製造販売主体の会社になった時点で、ソニーの将来は、益々、暗くなってしまったと思ったし、その旨、このブログにも書いた。(この日経記事でも、セル売却を後悔していると指摘)
一番最初に実用化し販売したLEDテレビだが、商品として顧客にアピールできる価格で提供出来ずに、サムスンに先を越されたのを見ても分かるように、技術の差別化の優位性の維持が殆ど不可能なコモディティ製品の場合、ソニーのコスト競争力は極めて弱いのでキャッチアップが並大抵ではない。
アメリカの製造業復活のために、MITチームが徹底的にグローバル企業の競争および成功戦略を調査した、スザンウ・バーガーの「グローバル企業の成功戦略」において、ソニーについて、興味深い指摘をしていて、ソニーのアウトソーシングを嫌った自前調達・純血主義が時代遅れで、ソニーのコスト競争力を削ぐ要因になる可能性を示唆していた。
アウトソーシングが技術流出につながるとして、技術のブラックボックス化を維持し続けていたのだが、これは、ソニーだけの問題ではなく、今でも、日本企業の戦略戦術でもあると言えよう。
しかし、今回の日経ビジネスでは、ソニーは、ほんの数年でこの方針を放棄して、今では、特に、パソコンでは、台湾や中国の業者を巻き込んだ水平分業型モデルが定着して好成績を挙げており、このコスト効率の高いSCMシステムを、コスト競争力に欠けるテレビ事業に導入してコストを削減するのだとモノ作り復権戦略をレポートしている。
この記事では、一回りも二回りも遅れているとしか思えないようなソニーの新しい(?)モノ作り戦略を報じているが、大きな車は回りが遅いの喩えで、限界を超えて大きくなり過ぎ制度疲労してしまったソニーには、瞬発力と機動力が必須ではないかと感じている。
余談ながら、スザンヌ・バーガーは、ソニーのビッグバンとも言うべきセルを、その処理能力は世界最速のスーパーコンピュータに匹敵と、起死回生の切り札と持ち上げているが、後の祭りである。
もう一つこの記事で気になったのは、ソニーの「ソニー・オンラインサービス(SOLS)」である。
ソニーのハード製品を結合融合して、インターネットで、ソニーのソフト(映画、アニメ、ゲーム、音楽、書籍)を、オンラインで提供しようとするシステムをはじめたことである。
ハードとソフトの経営資源と製品サービスを幅広く持ったソニーの最大の強みを活用しようと言うビジネスモデルで、ソニーならの戦略だが、問題は、このグローバルなデザインやプラットフォームが当然である時代に、当分は、ソニー製品サービス間だけの計差的ななシステムであると言うことである。
この点については、コメントを次回に譲りたい。