熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日本人の海外留学生は何故減っているのか

2012年03月01日 | 生活随想・趣味
   私は、今でも、東大や早稲田大学に出かけて、学生たちと机を並べて講義を受けることがある。
   両方とも、主に、法学部のCOEプログラムの公開講座なのであるが、私自身、大学の専攻は経済で、大学院の専攻は経営学なので、どうしても、法学の知識をアップツーデイトに保っておきたいと思ってであるが、最近、外国からの教授たちの来訪も多くて、英語で講義されることも多くなった。
   米国製MBAでありながら、法学関係の専門用語になると、専門知識の不足もあるが、殆ど理解できなくなることがある。
   しかし、もう、グローバリゼーションの時代であるから、日本語に通訳して知識を習得するような、悠長な時代ではない。

   ところで、話は飛ぶが、最近、急速に、アメリカのトップ大学や高等学術機関などへの日本人の留学生が、激減している。
   ハーバードのメアリー・C・ブリントン教授によると、2008年度の学部の日本人留学生は、たったの5人だと言う。
   中国や韓国の留学生は、日本人留学生の何倍もの数で、以前から、米国の有名大学などは中国の出先事務所を通じて好条件で、優秀な留学生を積極的に勧誘しているようだが、正に、クリエイティブ時代で、知の争奪戦がグローバル規模で行われているのである。
   東大も、中国に事務所を開設して、中国人留学生を勧誘するようなだが、これは良いことだとして、問題は、もっともっと、日本人の若者を、特に欧米の大学や高等学術機関へ送り出さないと、グローバル・ベースで、国際舞台で渡り合える人材が育たないと言うことである。

   何故、日本人留学生が減ったのか、ブリントン教授は、その理由を、3点上げている。
   一つは、アメリカの大学での学位が、日本社会や企業で評価されていないこと。
   二つ目は、日本人の学生が自分を売り込む能力に欠けていると言う可能性。アメリカの大学が入学を許可する基準として、柔軟な思考ができて、いろんなことに興味を持っている人間だと言うこと。
   三つ目は、日本人の若者が内向きになってきて、知らない国で知らない人たちの間で生きて行く経験をあまり求めなくなって来たから。
   これに対して、対談者の山岸俊男北大教授は、経済的な理由が一番大きいと思うと応えている。

   私が、ウォートン・スクールに留学した時には、同期は16人いたが、中央官庁から2人、日銀から1人、開銀から1人、東証から1人で、他は、都市銀行からが大半で、商社や外資系など民間企業からの派遣留学生であった。
   他の学年では、自費留学生が居たが、大半は、官庁か企業からの派遣留学生であったのだが、もう、40年ほども前のことであり、当時は、日本自体がまだ貧しかった頃だから、仕方がなかったということでもあった。
   
   今、ウォートン・スクールに留学すると、最低、2000万円かかると言うから、相当の財力がないと自費留学は無理で、貧しくなってしまった日本の若者が、自力でアメリカへ留学するなどは、殆ど無理であろうと思われる。
   昨秋、某大学で、欧米流MBA経営学では通用しないBRIC’sビジネスと言う大上段に踏み被ったテーマで講義したことがあったが、終わった後、何人かの学生が、私の所へ来て、留学の意思を語っていた。
   最近の若者は、チジミ志向だとか、外に出ていろんな機会を試して見ようと言うプロモーション志向ではなくて、なるべくリスクの少ない安心できる状態から出たくないと言う傾向だと言われているが、決してそうではなく、チャンスさえ与えれば、十分に挑戦する意欲はあるのである。
   若者たちへの財政的サポートを充実させて、背中を押すことである。

   政府も民間企業も、留学生を派遣する資力に欠けるのなら、NPOでもNGOでも何でも良いから、海外留学基金を設立して、留学生派遣することを考えたらどうであろうか。
   この団体へは、国民の寄付で賄うこととして、その寄付金は、所得控除の対象とすることは勿論、あらゆる便宜を図って優遇することである。
   振り込め詐欺などで、宙に浮く老齢者の預貯金のことを考えれば、眠っている1500兆円の一部でも引き出して、将来ある日本人の若者に注ぎ込むことを考えれば、これ程有効で意義ある投資はなく、日本の再生に大きく貢献することは間違いない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする