熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

二月大歌舞伎・・・昼の部「四千両小判梅葉ほか」

2017年02月08日 | 観劇・文楽・歌舞伎
   やはり、「昼の部」の目玉は、「四千両小判梅葉」で、大胆にも江戸城の御金蔵破りをして曝し首になる菊五郎の野洲無宿富蔵と梅玉の藤岡藤十郎を主人公とした、一寸桁違いの大盗賊の話で、中々、味のある歌舞伎で面白い。

   ただ、この舞台は、2012年の顔見世興行で、殆ど同じ登場人物で公演されており、私自身、このブログで観劇記を書いており、結構読まれていて、それ以上の記事を書くことも出来ず、蛇足となるので、止める。
   いずれにしても、意表を突くようで興味深いのは、「伝馬町大牢の場」である。
   大きな 牢屋内の一室で、畳を重ねた高みに陣取った"牢名主 松島奥五郎(左團次)"と"隅の隠居(歌六)"が左右に居を占め、その間に、富蔵などの顔役6人が座って牢内の諸事を取り仕切り、20人くらいの罪人が左右の端に整然と並んで座っている。
  上席の二番顔役の富蔵が、新入りの罪人を一人一人詰問して、吟味しながら牢内の居場所を決めるのだが、大枚の金子を隠し持って入って来たものや、男前で器用で調子のよい新入り・寺島無宿長太郎(菊之助)などに甘く、「地獄の沙汰も金次第」と見得を切る。

   実情を聞きこんで芝居を書いたと言うので、当時の牢屋事情だと思うのだが、極めて整然として秩序だった牢内のシステム管理とコーポレートガバナンスの徹底が、興味深い。
   最後には、二人は刑場に引かれて行くのだが、処刑が決まって出牢する富蔵に、牢名主が着物と博多帯、隅の隠居が数珠を贐として与えるところなど実に面白い。
   役者たちも適役で出色の出来だが、菊五郎の極め付きと言うべき芝居が、感動的である。
   
   「猿若江戸の初櫓」は、
   出雲の阿国と猿若の一座は、江戸での旗揚げを目指す道中で、材木商の福富屋万兵衛が、将軍家への献上品を届ける途中に狼藉者が暴れて立ち往生しているのに出くわす。猿若は、若衆を集めて音頭を取って荷物を運ばせ、それを見た奉行の板倉勝重が、猿若たちの働きを褒めて、江戸中橋の所領を与えて、江戸での興行を許し、福富屋に芝居小屋の普請を命じる。期せずして、江戸旗揚げを実現した猿若たちは、喜んでお礼として舞を披露する。

   岩波講座の「歌舞伎文楽」10巻を積んどくなので、江戸歌舞伎の歴史などが良く分からないのだが、チラシでは、「江戸歌舞伎発祥を華やかに描いた猿若祭にふさわしい一幕」と言う。
  特に内容のある歌舞伎ではないと思うのだが、いずれにしろ、 猿若の勘九郎と阿国の七之助の舞台である。

   「大商蛭子島」は、平家追悼の院宣を持つ文覚上人が、頼朝に会って、院宣を手渡し、頼朝が平家討伐の旗揚げを決意し、遺族郎党が結集すると言う話。
   冒頭、大変好色な寺子屋の師匠の正木幸左衛門が、実は、頼朝であって、その女房おさよ(時蔵)が悋気を起こして痴話げんかを演ずるハチャメチャの出だしで、寺入りを望んでやってきた若い娘おますが、実は、政子で、おさよがおますに妻の座を譲ると言う展開になったり、文覚(勘九郎)が、身を窶して乞食坊主のようないでたちで獄谷の清左衛門の名を騙って現れたり、とにかく、ストーリーに脈絡が欠乏していて、良く分からない芝居であった。
   寸前まで夫であった頼朝と政子の新婚初夜を睨みながら、長唄「黒髪」に乗って演じる、苦悶する時蔵の芸の冴え(?)が、見どころであろうか。
   それに、助平の松緑が面白く、勘九郎が、ほろっと勘三郎を思わせる声音や仕草をして驚かせる。

   鳶頭の梅玉と芸者の雀右衛門の「扇獅子」は、綺麗な舞台で、一服の清涼剤。
   
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