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先に引用した岩井克人教授の論考で、教えられたのは、迂闊にも知らなかったシーモア・リプセットの「豊かな国ほど民主主義を維持できる可能性が高い」と言う説である。
Wikipediaの英語版で、この部分を引用すると、
リプセットの「民主主義の社会的要件: 経済発展と政治的正当性」は、近代化理論、民主化に関する重要な著作であり、ここで、経済発展が民主主義につながるという「リプセット仮説」を立てた。
リプセットは「近代化理論」の最初の提唱者の 1 人であり、民主主義は経済成長の直接的な結果であり、「国が裕福であればあるほど、民主主義を維持する可能性が高くなる」と述べている。 リプセットの近代化理論は、民主主義への移行に関する学術的な議論や研究において、引き続き重要な要素となっている。
私が注目しているのは、これまで何度も書いてきたが、国家経済が成長発展して成熟の段階に達しなければ、民主主義制度を確立することも維持することも不可能である。と言うことで、このことが論証されたことである。
成熟経済国家になった欧米先進国には民主主義が定着しており、日本を追いかけて雁行成長で離陸した東南アジアの台湾、香港、韓国、シンガポールなどもそのケースである。
一方、民主主義政治体制を取りながら、中所得や低所得の新興国に留まっている国、例えばインドなどは、まだ、民主主義もどきと言った段階であろうか。
欧米先進国の識者たちは、驚異的な経済成長を遂げて大国へと驀進した中国に対して、民主主義国家への脱皮を期待したが、ロシアと共に、西欧型民主主義を否定して、専制主義的独裁国家に変貌して、違った発展経路を打ち立てた。
本来の民主主義体制を構築するためには、ウォルト・ロストウの経済発展段階説を昇りつめて離陸するために、大変な努力と時間を費やして経済発展を遂げなければならなかった。
しかし、今日では、知識情報化社会でノウハウが拡散し、かつグローバル経済世界で多くの成長発展の先例が生まれて、そのショートカット方式を採用して、中国やロシアのように専制主義国家体制を取って、独裁的に、経済の成長発展を策した方が、手っ取り早く実現可能となった。
多くの発展途上国がこれに倣って、七面倒な自由や人権やと言った問題に悩まされることなく、発展を遂げられるので、欧米よりの民主主義国家がどんどん減って行くのは、歴史の当然の帰結である。
したがって、前述のリプセット仮説は、欧米先進国型の民主主義と経済成長の直接的な結果を述べているのであって、現下では、欧米型の「国が裕福であればあるほど、民主主義を維持する可能性が高くなる」国もあれば、国の富裕貧困に拘わらず、従来の民主主義には縁のない国が多くなってきた、
民主主義(?)の変質と言うべきか、全く異なった政治経済社会体制が形成されつつあると言うことである。
ところで、トランプアメリカの民主主義の危機はどう見るべきなのか、
「国が裕福であればあるほど、民主主義を維持する可能性が高くなる」と言うのだが、その豊かなアメリカが、民主主義の最大の危機に直面している。
ディストロイヤー・トランプが、民主主義を破壊すると豪語している(?)のである。