熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ビジネス・モデルが大きく変革・・・東大伊藤元重教授の講演

2005年11月25日 | 政治・経済・社会
   NTT COM フォーラムで、伊藤元重教授の「世界で戦える企業とは」と言う演題の講演を聞いた。
   世界経済の潮流から説き起こしての経済談義であったが、結論は、総合ではなく、ブルーオーシャン戦略等を駆使して、選択と集中を追及し差別化を目指したオンリーワン企業を目指すこと、そして、単なるモノを売る企業ではなくソリューションを提供できる企業たれと言うことのようである。

   世界経済の新潮流については、
   1)リージョナル化、即ち、地域経済化が進展し、かつ、国境を越えた分業が進む。
   2)高齢化する先進工業国と躍進する新興国、世界のGDPの75%を生み出す先進工業国が高齢化・成熟化して経済の牽引力とはならず、グローバル化によりBRIC’s等の新興国が代わりにに台頭
   3)マクロ経済的な不確実性、世界の資本を吸収するアメリカがいつまでドル高を維持できるのか、ポテンシャルは高いが中国リスクは大きい
   等の変化要因について語った。

   技術革新のインパクトについては、現在進行中のデジタル革命は、持続性が高く、深みと広がりのある技術であり、この技術革新によって、産業構造が大きく変革してきたと言う。

   日本経済の活性化のためには、資源配分の効率化、人間力の向上、海外資源の有効活用しかないと強調する。
   製造業は、差別化により国際競争力を強化し、大きな潜在力を秘めた非製造業は、規制緩和や民営化によって市場の拡大強化をはかり、市場開放することによってアジアの経済力を活用することが重要である。

   このような経済社会環境の中で、企業が活力をつけるためには、総合的なアプローチはダメで、ウエルチが総合電機会社であったGEを全く違った会社に変えてしまったように、ニッチ戦略集団を目指すことが必須である。
選択と集中、そして、企業の仕組みを高度化して差別化を図りながら、他の企業の追随を許さないような新しい事業を開拓して、競争力を維持涵養することが大切だと仰っている。

   極めて常識的でオーソドックスな理論展開で異存はない。
   しかし、何故、新興企業の楽天やライブドア、そして、村上ファンドに日本中が振り回されているのか、と言う問には、何も答えていないし、応えられないと思う。
   実需の製造業の生産高やその輸出入額の100倍以上の資金がグローバルに行き交っており、実態の伴わないIT産業の途方もない株高と巨大な時価総額で示された実力が猛威を振るっているこの現在の経済社会において、地道に事業活動を行っている企業が翻弄されているのである。

   デジタル化によって、部品さえ集めて組み立てれば、新参の企業でも簡単に薄型テレビが作れ、素人の個人が自分好みのパソコンが作れる、そんな世の中になってしまったお陰で、ハイテク・コンシューマー・エレクトロニクス製品が大幅に値崩れしてソニーやパイオニア、サンヨーが瞬く間に負け犬になってしまうのである。
   
   野口悠紀雄教授が、新興IT企業がに成功して企業価値が瞬時にうなぎのぼりに上がって、ストックオプションで自社株を得た掃除係のおばさんが億万長者になった話をして、新しいゴールドラッシュの時代が来たとしている。
   何でもありの新興企業の世界と在来型の企業が共存する2重構造の経済社会を想定して企業成長論を打たないと道を誤る。
   そう思いながら先生の講演を聞いていた。
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