
東芝、三菱電機のトップに続いてソニーのストリンガーCEOが、「デジタル時代のコンシューマー・エレクトロニクスの将来」と言う演題で、基調講演を行った。
先の両人は、現今のIT関連のカレントトピックスなど背景を語りながら自社の戦略等を語っていたが、ストリンガーCEOは、殆ど冒頭から、ソニーの改革について話し始めた。
従って、語ったコンシューマー・エレクトロニクスの将来は、ソニーの将来である。
先に新しい経営戦略について発表されていたので、目新しいものは何もなかったが、実際に、直接、ストリンガーCEOから話されると印象が違ってくる。
メモを見ながら、慎重に、しかし、迫力のある丁寧なクイーンズ・イングリッシュなので、分かりやすく印象的であった。
ストリンガー氏は、ソニーが、世界でも有数のイノベイション志向の革新的な会社であることを強調しながら、コモディティ化した市場での価格破壊に悪戦苦闘し業績が悪化した現状を踏まえて、如何に革新的な技術と製品を開発することによってソニーを再生するのかその方向を示そうとしていた。
しかし、本質的には、選択と集中、コアであるコンシューマー・エレクトロニクス分野に経営資源を集中して、その中でイノベイティブな製品(チャンピオン・プロダクツ)の開発を行い、差別化によってコンシューマー・エレクトロニクス分野でのリーダーとしての地位を回復しようと言うことである。
先にストレッチ・カンパニー理論を引いてソニーの再生について論じた(9月23日)。再述すると、
「売上成長率も時価総額成長率も低いアンダーパフォーマー(停滞・不振企業)であるソニーは、最高位のバリューグロワー(価値創造成長企業)に事業再構築するためには、CEO主導の強力なビジョンと顧客重視が必須である。
僅かな時間の余裕も許されず、変化する顧客のニーズに対応した商品を提供して信頼と人気を回復して、リストラ、利益率アップ、売上高成長に均等に重点を置いてすばやく勝利を納めて、バリューグロワーへの道を一直線に駆け上がる以外に再生の道はない。」
正にそのとおりであろう。
ストリンガーCEOのソニーの再生プランを纏めてみると次のとおりである。
ソニー再生への重点施策は、
1.個別最適化志向の”サイロ体質の解消”
2.事業領域の絞込み
3.ソニーならではの強みの追求 である。
ソニーの持つハードウエア+ソフトウエア+サービスの方程式によって、チャンピオン・プロダクツを創出する。
再生プランの基本的指針は、構造改革と成長戦略の二つの軸で推進する。
コア・ビジネスの根幹を成すのは、セルの商品化、ソニーの創りだすHDの世界―Hi Vision Quality, デジタル携帯オーディオの推進、エンターテインメント・ゲーム事業、UMDフォーマットのサポート、デジタル技術による映画創出、である。
構造改革の結果、
商品化のスピードアップ、マーケットの変化への機敏な対応、在庫水準の低減、キャッシュフローの改善、販売予測精度の向上、焦点を絞ったマーケティング、
等の成果を期待している。
これによって再生し、世界のソニーを目指す。
私なりに解釈すれば、とにかく、大企業病と言うか官僚化して無茶苦茶になってしまったソニー企業内部の組織管理体制を抜本的に改革・リストラ・スリム化して、機能するように再活性化する。(前述のストリンガーCEOの構造改革の成果で言っている事は、普通の会社では、当たり前にやっていることである。ソニーでは、改革と言わねばならない、寂しいことである。)
そして、残った経営資源を、コアのコンシューマー・エレクトロニクスとゲームとエンターテインメント部門に集中して、革新的な製品を開発し、業績の回復を目指す、と言うことのようである。
余談だが、ストリンガーCEOは、英紙ファイナンシャル・タイムズに、リストラの大ナタを振るいたかったが、社内の抵抗にあって出来なかったともらしたようだが、この話は現状のソニーを良く物語っていると思った。
今回のCEATECのソニーのブースを訪れたが、看板の液晶薄型テレビ・ブラビアのディスプレーで、新旧のテレビを比較して、明るさや細密度、色の分離など細部にわたって説明していたが、如何に旧型ソニーテレビの質が低かったかを証明しているだけで、全く逆効果であった。
トップのシャープとの質の差のアピールはなく、むしろシャープやパナソニック、パイオニア等競争会社のテレビの方がアピール度が高くて品質も遜色なく、ソニーらしさが全く現れていないので特にソニーを買わなければならない理由など全くない。
もう一つの売り物デジタル携帯オーディオだが、再生プラン発表時の記者会見でソニーのトップが上下さかさまに持って写真に写っていたのだからその熱心さが分るが、ブースの客足もほどほどだし、アップルがiPod nanoを展示していなかったからこそ救われたが、全く寂しい限りである。
ブレイクスルーを目指しているテレビはシャープに大きく差を開けられており、デジタル携帯オーディオはアップルのiPod nanoに次ぐ2番手、再生第一歩がこれでは、先が思いやられる。
ダントツトップの製品を開発しない限り、ソニーの復活はあり得ない。
長くなってしまったので端折るが、ソニーの今回の改革は、あくまで、攻撃型前向きの成長戦略志向ではなくて、終戦処理のリストラ重視、体制立て直しの選択と集中の改革である。
これは、セリジオ・ジーマンの言うリノベーションである。
ジーマンは、リノベーションの場合、重要なのは、コア・エッセンスの活用だと言う。
iPodの成功は、アップルのコア・エッセンス(クリエイティブなハイテクによる楽しさ)の理論的延長線上にあったからだと言う。
コア・コンピタンシー(音楽ファイルを保存する方法など)は買収して資産を整備しただけで、既存のアイデアを活用したアップルのリノベーションだと言う。
ソニーのコア・エッセンスは、何であろうか。例えば、ハイテクで誰にも真似の出来ないようなワクワクさせるコンシューマーエレクトロニクスの開発、であろうか。
世界のソニーフアンが買いたがっている製品(正にソニーのソニーたるチャンピオン・プロダクツ)を開発・生産して、ソニーの成長戦略と直結させる、それ以外にソニーの未来はないように思うがどうであろうか。
先の両人は、現今のIT関連のカレントトピックスなど背景を語りながら自社の戦略等を語っていたが、ストリンガーCEOは、殆ど冒頭から、ソニーの改革について話し始めた。
従って、語ったコンシューマー・エレクトロニクスの将来は、ソニーの将来である。
先に新しい経営戦略について発表されていたので、目新しいものは何もなかったが、実際に、直接、ストリンガーCEOから話されると印象が違ってくる。
メモを見ながら、慎重に、しかし、迫力のある丁寧なクイーンズ・イングリッシュなので、分かりやすく印象的であった。
ストリンガー氏は、ソニーが、世界でも有数のイノベイション志向の革新的な会社であることを強調しながら、コモディティ化した市場での価格破壊に悪戦苦闘し業績が悪化した現状を踏まえて、如何に革新的な技術と製品を開発することによってソニーを再生するのかその方向を示そうとしていた。
しかし、本質的には、選択と集中、コアであるコンシューマー・エレクトロニクス分野に経営資源を集中して、その中でイノベイティブな製品(チャンピオン・プロダクツ)の開発を行い、差別化によってコンシューマー・エレクトロニクス分野でのリーダーとしての地位を回復しようと言うことである。
先にストレッチ・カンパニー理論を引いてソニーの再生について論じた(9月23日)。再述すると、
「売上成長率も時価総額成長率も低いアンダーパフォーマー(停滞・不振企業)であるソニーは、最高位のバリューグロワー(価値創造成長企業)に事業再構築するためには、CEO主導の強力なビジョンと顧客重視が必須である。
僅かな時間の余裕も許されず、変化する顧客のニーズに対応した商品を提供して信頼と人気を回復して、リストラ、利益率アップ、売上高成長に均等に重点を置いてすばやく勝利を納めて、バリューグロワーへの道を一直線に駆け上がる以外に再生の道はない。」
正にそのとおりであろう。
ストリンガーCEOのソニーの再生プランを纏めてみると次のとおりである。
ソニー再生への重点施策は、
1.個別最適化志向の”サイロ体質の解消”
2.事業領域の絞込み
3.ソニーならではの強みの追求 である。
ソニーの持つハードウエア+ソフトウエア+サービスの方程式によって、チャンピオン・プロダクツを創出する。
再生プランの基本的指針は、構造改革と成長戦略の二つの軸で推進する。
コア・ビジネスの根幹を成すのは、セルの商品化、ソニーの創りだすHDの世界―Hi Vision Quality, デジタル携帯オーディオの推進、エンターテインメント・ゲーム事業、UMDフォーマットのサポート、デジタル技術による映画創出、である。
構造改革の結果、
商品化のスピードアップ、マーケットの変化への機敏な対応、在庫水準の低減、キャッシュフローの改善、販売予測精度の向上、焦点を絞ったマーケティング、
等の成果を期待している。
これによって再生し、世界のソニーを目指す。
私なりに解釈すれば、とにかく、大企業病と言うか官僚化して無茶苦茶になってしまったソニー企業内部の組織管理体制を抜本的に改革・リストラ・スリム化して、機能するように再活性化する。(前述のストリンガーCEOの構造改革の成果で言っている事は、普通の会社では、当たり前にやっていることである。ソニーでは、改革と言わねばならない、寂しいことである。)
そして、残った経営資源を、コアのコンシューマー・エレクトロニクスとゲームとエンターテインメント部門に集中して、革新的な製品を開発し、業績の回復を目指す、と言うことのようである。
余談だが、ストリンガーCEOは、英紙ファイナンシャル・タイムズに、リストラの大ナタを振るいたかったが、社内の抵抗にあって出来なかったともらしたようだが、この話は現状のソニーを良く物語っていると思った。
今回のCEATECのソニーのブースを訪れたが、看板の液晶薄型テレビ・ブラビアのディスプレーで、新旧のテレビを比較して、明るさや細密度、色の分離など細部にわたって説明していたが、如何に旧型ソニーテレビの質が低かったかを証明しているだけで、全く逆効果であった。
トップのシャープとの質の差のアピールはなく、むしろシャープやパナソニック、パイオニア等競争会社のテレビの方がアピール度が高くて品質も遜色なく、ソニーらしさが全く現れていないので特にソニーを買わなければならない理由など全くない。
もう一つの売り物デジタル携帯オーディオだが、再生プラン発表時の記者会見でソニーのトップが上下さかさまに持って写真に写っていたのだからその熱心さが分るが、ブースの客足もほどほどだし、アップルがiPod nanoを展示していなかったからこそ救われたが、全く寂しい限りである。
ブレイクスルーを目指しているテレビはシャープに大きく差を開けられており、デジタル携帯オーディオはアップルのiPod nanoに次ぐ2番手、再生第一歩がこれでは、先が思いやられる。
ダントツトップの製品を開発しない限り、ソニーの復活はあり得ない。
長くなってしまったので端折るが、ソニーの今回の改革は、あくまで、攻撃型前向きの成長戦略志向ではなくて、終戦処理のリストラ重視、体制立て直しの選択と集中の改革である。
これは、セリジオ・ジーマンの言うリノベーションである。
ジーマンは、リノベーションの場合、重要なのは、コア・エッセンスの活用だと言う。
iPodの成功は、アップルのコア・エッセンス(クリエイティブなハイテクによる楽しさ)の理論的延長線上にあったからだと言う。
コア・コンピタンシー(音楽ファイルを保存する方法など)は買収して資産を整備しただけで、既存のアイデアを活用したアップルのリノベーションだと言う。
ソニーのコア・エッセンスは、何であろうか。例えば、ハイテクで誰にも真似の出来ないようなワクワクさせるコンシューマーエレクトロニクスの開発、であろうか。
世界のソニーフアンが買いたがっている製品(正にソニーのソニーたるチャンピオン・プロダクツ)を開発・生産して、ソニーの成長戦略と直結させる、それ以外にソニーの未来はないように思うがどうであろうか。