熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

吉本新喜劇・・・なんばグランド花月(2)

2009年08月15日 | 観劇・文楽・歌舞伎
   ところで、今回の吉本新喜劇だが、辻本茂雄が、ある老舗旅館に住まう座敷童子(ざしきわらし)として登場する。
   この座敷童子と言うのは、岩手県の民話で語られている、旧家や豪家の奥座敷に住むと言う赤面垂髪の悪戯好きの童子で、その存在が家の趨勢を制すると言われており、その家の者にしか見えない謂わば隠れ神である。
   ところが、この舞台は、東北など全く関係なく、有馬温泉のどこかの老舗旅館と言った雰囲気。
   本来は、柳田國男の東野物語のような世界なのであろう。山田監督が怒るかも知れないが、謂わば、寅さんの世界に近い今様パロディと言ったところで、色々な種類のわらしが出てくるし、謝金の単位は、円ではなく、「わらし」で、ここまで来ると、話のつじつまよりあほらしさが先にたつ。

   5~6歳の子供である筈が、あの顔でおかっぱ頭にして、奇天烈な格好をした辻本の座敷童子は、妻も子もあり、それに、借金取りに追われていると言う設定で、この辻本わらしが、狂言回しになって登場人物の運命を操るのであるから、舞台はハチャメチャ。
   国道交通大臣夫妻の離婚騒動から、中年男と駆け落ちする社長令嬢をめぐるドタバタ、それに、潰された土建会社の恨みなど、旅館の女将・従業員や秘書・警察などを巻き込んでの迷走劇であるから、馬鹿らしさの極みで、知性教養などはほんの片鱗、哲学・思想・芸術性ゼロの不毛な演劇。
   勿論、金と時間の無駄使いで、開演直前半額になるイングリッシュ・ナショナル・オペラのモーツアルトを見ている方が遥かに有益だが、それでも、とにかく、面白いのである。

   甲子園に来ている地方の高校野球の生徒から、地元の高校生と思しき生徒たちなど、観客の殆どが若い人たちで、ギャグの応酬や突拍子もない激しいアクションに爆笑・哄笑。東京では考えられないような雰囲気である。
   私など、大阪を長い間離れているので、大阪人としての感が鈍ってしまって、その笑いについて行けず、何故、笑っているのか分からない始末。

   子供の入場制限などしていないようで、客席で幼児が親と話しているし、子供たちが平気で通路を行き来し出入りしている。
   朝の興行は、「こども特別公演」と銘打っているが、プログラムは殆ど変わっていないようである。
   今回、漫才のネタに、大阪は日本一痴漢が多いと言って、痴漢撃退法を教えるなどと言いいながら漫才の二組までもが痴漢を話題にして、「お前女になれ」と言って身をくねらせてお尻を触るなど、全く、大らか限りない。
   アムステルダムの飾り窓は、何の境もなく、市役所別館や民家の並ぶ住宅街に散在しているのだが、あの大らかさに似ている。良いのか悪いのか、判断に苦しむ。    

   ところで、漫才だが、やはり、年季の差であろうか、中田カフス・ボタンや、西川のりお・上方よしおは、それなりに、話術が冴えていてうまい。
   悪戯好きであり暴力団との噂も話題になった中田カフスだが、おお取りなので「ものづくり」をテーマにして少し長く舞台に立っていた。
   そのネタだが、歯ブラシの毛は種を植えるのだと言う奇想天外な話を、花屋での種の買い方から始めると言う馬鹿話。しかし、あの何とも言えない間延びした惚けた会話の面白さは秀逸で、ある意味では上方漫才の極致かも知れない。

   西川のりおは一時東京に進出したが、フィーリングが合わないのか帰ってきているが、やはり、大阪で育った芸人も、全国版と地方版があるのであろうが、勿論、芸の優劣には差がないと思う。
   週代わりで登場するオール巨人・阪神なども、全国版ではなく、大阪で絶大な人気を博する漫才で、やはり、漫才は、上方と東京とでは、芸の質が全く違うからであろうと思う。
   私も、東京に転勤してきた時、コロンビア・トップ・ライトの漫才には違和感を感じて面白くなかったのを覚えている。
   その点、文珍、三枝、鶴瓶など落語陣は、それほど芸や話術に差がないので全国的な人気を博することが出来るのであろうか。

   2列目に座っていた丸坊主頭の小さな小学生が、あまりにもげらげら笑い転げているので、「こら!マルコメ、ここに出て来い」と言って大の漫才師が掛け合っていたのが面白かったが、これが、吉本の舞台なのであろう。
   次代の吉本予備軍かもしれない。  



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