
早大COEの「ヨーロッパと日本シンポジューム」の二日目は、「資本市場―法制と自主規制」と「ガバナンスと透明性の確保」がテーマで、日欧のその道の権威達が活発に議論を戦わせた。
初日に開講挨拶をする予定だった奥島孝康早大前総長が、飛び入りで挨拶して「上村ワールドへようこそ」と言って、上村教授にエールを贈った。
上村教授の会社法は、企業や資本市場に対して市民社会との関わりやその調和を重視する立場で、特異だが、貴重なアプローチである。
先日、ソニーがCSR調達を発表したが、今後、益々、会社法と市民社会とのクロスが重要になってくる。
アメリカの資本市場は、市民社会を一切気にしておらず、このため、企業活動を厳格な証券取引法や関連諸制度でぎりぎりに締め上げる武装平和主義だが、日本政府は、これを取りいれようとしている。
ベストプラクティスを大切にするヨーロッパの法制度とのハザマで、日本は如何に生きて行くのか、上村法学が一つの光明となることを期待している。
そんな内容だったように思う。
「アメリカは、ヨーロッパの伝統的保守的な警戒的な法制度を、各州の規制緩和競争で放棄してしまって規律なき自由な経済社会に移行したが、この結果、証券市場の暴落に引き金を引き大恐慌に到った。
この経験に懲りて、米国は、その後、厳格な証券制度とそれを厳格に実施する為の付随的な諸制度を充実させた。
SEC,包括規定による抜け穴の否定、報奨金、司法取引、クラスアクション、ディスカバリー、民事制裁、行政処分による利益の吐き出し、おとり捜査、盗聴、覆面操作等、正に、(保安官とジョン・ウェインとライフルが不可欠な西部劇の世界)を構築したのである。
アメリカは企業による自主対応防衛政策を統一的な会社法制に出来ない、統一商法典たる連邦会社法のない特異な国で、それを証券取引法や取引所規則等で縛っている。」
しかし、この保安官もジョン・ウェインも居ないライフルもない日本に、十分な法制度の整備をしないで、アメリカの自由な法制度をそのまま導入し野放しにすればどうなるか。
「アメリカをモデルにするならば、真っ先に、アメリカ的自由を可能にする、日本に一切備わっていない厳格な前述の怖い制度をも導入すべきである。
最近のIT企業の企業買収の動きが如実に問題点を浮彫りにしており、健全な市民社会を危機に陥れている。
殆ど従業員も居ない得体の知れないファンドが、出所のよく分からない金を使って健全な企業の株を買収して問題を引き起こす資本市場を持つような社会が健全だと言えるのであろうか。」
証券市場が悪いのか、企業の対応が悪いのか、或いは、経済社会がいびつなのか、東証1部上場の健全な企業で、時価総額1000億円を切る会社は何百社とあり、株価が上昇軌道に乗り始めたら、ひとたまりもなく、グローバルなハゲタカの餌食になっても不思議ではない。
法の抜け穴探しに長けた勝ち組が、悪人であるかもしれない。
上村教授は、そんな問題提起をしている。
株式交換による企業買収については、外国企業の脅威に怯えて、法の施行を1年ずらせたりしたが、楽天の持ち株会社提案等はその変形で、日本には起こらないと思っていたことが、日本に起こっただけである。
アメリカで、超天文学的数字のPERを示した新興IT企業が、株式交換方式で既存企業を買収合併した時点で、小魚が鯨を飲む西部劇的アメリカ資本市場の熾烈さは分っていた筈である。
新興のIT企業AOLが、老舗のタイム・ワーナーを吸収合併したが、その後はどうなったかを考えてみれば、結果と問題点は十分に分る。
営々と築いてきた日本社会の公序良俗や健全な市民社会を維持することがいかに大事か、考えてみる必要があるかも知れない。
誤解のないように付記しておくが、例えば、一連のカネボウ事件や西武の堤事件など言語道断な日本の会社経営等を含めて日本の経済社会を全肯定しているのではない。
カネボウ事件など、当初、監査法人や公認会計士協会等知らぬ存ぜぬで逃げていたが、知らないはずがない。もし知らないとすれば、あの程度の会計の不正を見抜けないような監査法人なら、即刻会社を畳んでカンバンを降ろすべきである。
そんなことを十分承知で対応している政府やメディアや日本の社会が問題なのである。
エンロン事件では、アーサー・アンダーセンは地球上から永遠に消えた。カネボウ・ケースの会計監査法人も同罪、あるいは、先例がありながら教訓にさえしなかったのだからもっと罪は深いかも知れない。
しかし、日本では、多少緊張した程度で会計監査体制には殆ど変化はない。この大きな落差を上村教授は問題にしているのである。
それでも、私は、やはり、世界に冠たるこの日本の経済社会を健全に維持するために努力すべきは当然であると思っている。
(追記)COEのシンポジュームは、井深大記念館で行われていたが、早大のキャンパス内は、早稲田祭で、大変な賑わいであった。
高度なシンポジュームが開かれているかと思えば、学生がキャンパスで学園祭をエンジョイしており、図書館で学究に耽っているヒトが居れば、憲法改正を掲げる小泉内閣打倒の叫び学生運動をする学生も居る、とにかく、早稲田は懐が深い。
若い学生達でごった返していたが、交通整理からゴミ処理の手配等万全で、とにかく、実に整然とした好感の持てる清清しい早稲田祭であった。
ジャズ演奏や寸劇を楽しみながら、屋台で慣れない手つきで甲斐甲斐しく作ってくれた明石焼きと焼き鳥とどら焼きを頂いたが、美味であった。
初日に開講挨拶をする予定だった奥島孝康早大前総長が、飛び入りで挨拶して「上村ワールドへようこそ」と言って、上村教授にエールを贈った。
上村教授の会社法は、企業や資本市場に対して市民社会との関わりやその調和を重視する立場で、特異だが、貴重なアプローチである。
先日、ソニーがCSR調達を発表したが、今後、益々、会社法と市民社会とのクロスが重要になってくる。
アメリカの資本市場は、市民社会を一切気にしておらず、このため、企業活動を厳格な証券取引法や関連諸制度でぎりぎりに締め上げる武装平和主義だが、日本政府は、これを取りいれようとしている。
ベストプラクティスを大切にするヨーロッパの法制度とのハザマで、日本は如何に生きて行くのか、上村法学が一つの光明となることを期待している。
そんな内容だったように思う。
「アメリカは、ヨーロッパの伝統的保守的な警戒的な法制度を、各州の規制緩和競争で放棄してしまって規律なき自由な経済社会に移行したが、この結果、証券市場の暴落に引き金を引き大恐慌に到った。
この経験に懲りて、米国は、その後、厳格な証券制度とそれを厳格に実施する為の付随的な諸制度を充実させた。
SEC,包括規定による抜け穴の否定、報奨金、司法取引、クラスアクション、ディスカバリー、民事制裁、行政処分による利益の吐き出し、おとり捜査、盗聴、覆面操作等、正に、(保安官とジョン・ウェインとライフルが不可欠な西部劇の世界)を構築したのである。
アメリカは企業による自主対応防衛政策を統一的な会社法制に出来ない、統一商法典たる連邦会社法のない特異な国で、それを証券取引法や取引所規則等で縛っている。」
しかし、この保安官もジョン・ウェインも居ないライフルもない日本に、十分な法制度の整備をしないで、アメリカの自由な法制度をそのまま導入し野放しにすればどうなるか。
「アメリカをモデルにするならば、真っ先に、アメリカ的自由を可能にする、日本に一切備わっていない厳格な前述の怖い制度をも導入すべきである。
最近のIT企業の企業買収の動きが如実に問題点を浮彫りにしており、健全な市民社会を危機に陥れている。
殆ど従業員も居ない得体の知れないファンドが、出所のよく分からない金を使って健全な企業の株を買収して問題を引き起こす資本市場を持つような社会が健全だと言えるのであろうか。」
証券市場が悪いのか、企業の対応が悪いのか、或いは、経済社会がいびつなのか、東証1部上場の健全な企業で、時価総額1000億円を切る会社は何百社とあり、株価が上昇軌道に乗り始めたら、ひとたまりもなく、グローバルなハゲタカの餌食になっても不思議ではない。
法の抜け穴探しに長けた勝ち組が、悪人であるかもしれない。
上村教授は、そんな問題提起をしている。
株式交換による企業買収については、外国企業の脅威に怯えて、法の施行を1年ずらせたりしたが、楽天の持ち株会社提案等はその変形で、日本には起こらないと思っていたことが、日本に起こっただけである。
アメリカで、超天文学的数字のPERを示した新興IT企業が、株式交換方式で既存企業を買収合併した時点で、小魚が鯨を飲む西部劇的アメリカ資本市場の熾烈さは分っていた筈である。
新興のIT企業AOLが、老舗のタイム・ワーナーを吸収合併したが、その後はどうなったかを考えてみれば、結果と問題点は十分に分る。
営々と築いてきた日本社会の公序良俗や健全な市民社会を維持することがいかに大事か、考えてみる必要があるかも知れない。
誤解のないように付記しておくが、例えば、一連のカネボウ事件や西武の堤事件など言語道断な日本の会社経営等を含めて日本の経済社会を全肯定しているのではない。
カネボウ事件など、当初、監査法人や公認会計士協会等知らぬ存ぜぬで逃げていたが、知らないはずがない。もし知らないとすれば、あの程度の会計の不正を見抜けないような監査法人なら、即刻会社を畳んでカンバンを降ろすべきである。
そんなことを十分承知で対応している政府やメディアや日本の社会が問題なのである。
エンロン事件では、アーサー・アンダーセンは地球上から永遠に消えた。カネボウ・ケースの会計監査法人も同罪、あるいは、先例がありながら教訓にさえしなかったのだからもっと罪は深いかも知れない。
しかし、日本では、多少緊張した程度で会計監査体制には殆ど変化はない。この大きな落差を上村教授は問題にしているのである。
それでも、私は、やはり、世界に冠たるこの日本の経済社会を健全に維持するために努力すべきは当然であると思っている。
(追記)COEのシンポジュームは、井深大記念館で行われていたが、早大のキャンパス内は、早稲田祭で、大変な賑わいであった。
高度なシンポジュームが開かれているかと思えば、学生がキャンパスで学園祭をエンジョイしており、図書館で学究に耽っているヒトが居れば、憲法改正を掲げる小泉内閣打倒の叫び学生運動をする学生も居る、とにかく、早稲田は懐が深い。
若い学生達でごった返していたが、交通整理からゴミ処理の手配等万全で、とにかく、実に整然とした好感の持てる清清しい早稲田祭であった。
ジャズ演奏や寸劇を楽しみながら、屋台で慣れない手つきで甲斐甲斐しく作ってくれた明石焼きと焼き鳥とどら焼きを頂いたが、美味であった。