熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日欧シンポジューム(早稲田大学)・・・企業・資本市場・市民社会の現在と未来

2005年11月04日 | 経営・ビジネス
   今日は、久しぶりに良い天気で、朝早くから都の西北早稲田の杜に出かけて勉強してきた。
   キャンパスは、明日から始まる学園祭・早稲田祭りの準備で、学生達が、盛り上がっていたが、昔の自分を思い出しながら懐かしく眺めていた。
   私の学生時代は、丁度安保で、円山公園の集会に参加して河原町をデモっていた頃であるが、それでも、学園祭は楽しかった。
   この1年間に、偶々、ハーバード、ペンシルヴァニア、ミラノ、ケントの各大学のキャンパスを歩いたが、いつ行っても大学のキャンパスの雰囲気は格別である。

   早稲田大学COE(企業法制と企業創造総合研究所)主催の日欧シンポジューム「ヨーロッパと日本―企業・資本市場・市民社会の現在と未来」が、国際会議場井深大ホールで開かれたので出かけたのだが、英仏独から、そして、日本の会社法関係の権威者が参加してのシンポジュームであるから、夕方の6時頃まで格調の高い白熱した会議は大変なものであった。
   今日は、コーポレート・ガバナンスを中心とした会社法の動向とM&Aで、明日は、資本市場―法制と自主規制、そして、ガバナンスと透明性の確保、をテーマにシンポジュームが進む。
   今夜、ホテルで先生方を交えてレセプションがあったが、経済や経営なら専攻なので多少自信はあるが、法律は少し無理だし、知り合いがいるわけでもないので諦めた。
   ところで、これほど素晴しい高度なシンポジュームなのに、参加者は、100人と少しで、全く勿体無い限りである。
   ホリエモンや楽天のM&A、企業不祥事や監査法人の無機能等で騒いでいるわりには、日本のコーポレート・ガバナンスやM&A,透明性等への真剣さは、その程度なのである。

   COEのリーダー上村達男早大教授の基調報告「企業・資本市場・市民社会―日本の現状をどうみるか」で、シンポジュウムは始まった。
   ヨーロッパ的な成熟した政治経済社会の経験と市民の合意もなく、あるいは、厳格な証券規制とそれを厳格に実施する為の付随的な諸制度もないままに、たった今一斉に自由原則に転換したばかりなのが今の日本である。
   この自由の全面展開は、不良債権や銀行破綻の処理、ベンチャー法制の為の規制緩和、株価対策等当面の対策を実施する過程で、いわば不順な動機の帰結であって、日本の企業社会のあり方を真剣に時間をかけて模索した結果ではなかった。
   証券市場と一体の株式会社制度を運営していくことの怖さに思いを致すべきで、証券市場と正面から向き合う理論構成のための努力を怠った結果、市場規制が不十分な為に多発する安易な企業買収、買収後の企業結合法制が確立していない為に安易に企図される企業買収に、平凡で善意の企業が怯えている。
   このような状況に全く対応できずに、法の抜け穴探しに長けたものが勝利するジャングル資本主義が横行している。
   成熟した社会にあって、企業法制とは、資本市場法制とは、そしてそれらの法制のあり方が市民社会の合意や理念によってコントロールされる姿とはどのようなものなのか、アメリカ一辺倒ではなくて、ヨーロッパの成熟社会の企業法制・資本市場法制のあり方を学ぶ努力をこそ行うべきである。
   そんな上村教授の問題提起から、小田博ロンドン大学教授が中心になって本シンポジュームが準備された。

   江頭憲治郎東大教授が「日本における新会社法の制定と今後の課題」について講演。特に、中小企業法制について興味深い話を行った。
   続いて、LSCのP.デービス教授が英国の、J.シモンフランス企業連盟法務部長がEU及びフランスの、G.ヴェーゲンハンブルグ大学教授がドイツの、と夫々の会社法制の現状について講演した。

   後半は、日英仏独の専門の先生方に、午前中の講師が加わって、激しく、M&Aの法制度や付随的な制度や機関等について議論した。
   英国のテイクオーバー・パネルに関心が集中して、敵対的買収について白熱した議論が展開された。
   一番遠いはずのアメリカの法制度を強引に導入した日本だが、明治時代の開国時代のように、案外、バックグラウンドと歴史や社会背景の近いヨーロッパ法制とその制度を学ぶことの方が、はるかに有意義かもしれない、そんな気を起こさせてくれるシンポジュームであった。
   

   
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