熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

「帰らざる河」に差し掛かった地球環境の危機・・・環境・エネルギー課題解決のための賢人会議

2007年11月08日 | 地球温暖化・環境問題
   宇宙船地球号が、エコシステムのの崩壊で、人類の危機に直面している。
   こんな警鐘が鳴らされて久しいが、先日、品川のホテルで、多くの聴衆を集めて第2回目の「環境・エネルギー課題解決のための賢人会議」が開催され、甘利明経産大臣が「美しい星50」を語り、ジョン・ハットン英国ビジネス・企業・規制改革大臣が、「気候変動・エネルギー革新への挑戦」について熱っぽく論陣を張った。
   クリスチャン・エーゲンホッファ氏の「EUの気候変動政策の現状」公演は、正に、EUでの地球環境を死守する為の地球温暖化への最前線の戦いを生々しく語っていたが、西田厚聰東芝社長、中鉢良治ソニー社長、ロレイン・ボルシンガーGEバイス・プレジデントの企業ベースの果敢かつ意欲的な地球環境保全への取り組みなどの講演は、正に、我々一般人の膝元から大きなエコシステム擁護の戦いが始まっていることを感じさせて感動的でさえあった。
   エコジャパンと日経の主催だが、早くから環境問題に意欲的に取り組んできた作家山根一眞氏が、ラジェンドラ・パチャウリIPCC議長のビデオでのメッセージや会談を交えながら司会進行を勤め、実質4時間あまりのフォーラムを非常に意義深いものに仕上げていた。

   ガイヤ仮設のジェームス・ラブロックが、「地球は、地球温暖化の引き返すことの出来ない時点を通り過ぎてしまったと言っている。地球のエコシステムは、もう崩壊を止めることの出来ないポイント・オブ・ノーリターンまで行ってしまった、もう、今となっては遅すぎると言っているのである。

   しかし、ハットン大臣も冒頭で触れたが、地球温暖化に対する経済学に対するスターン・レポートでは、このまま加速し続ける地球温暖化を放置すれば、経済的損失は最大世界のGDPを20%を失うことになるが、今直ちに対応すれば、1%の対策コスト、すなわち、20分の1の投資で済むと計算している。
   一文惜しみの銭失いどころか、この1%を惜しむと途方もないことになってしまうと言うことである。

   何れにしろ、北極海の海氷が異常な速度で氷解しており、グリーンランドや南極大陸の氷床の氷解が進むと海面水位がどんどん上昇して行き、世界各地の大都市の多くは勿論東京湾が水没して行くことは明らかで、その前には、グローバルベースでの極端な異常気象の出現でエコシステムの崩壊が起こるであろう。

   ところが、京都議定書の本国でありながら、日本の国家レベルでの地球温暖化対策は世界でも最も遅れた国で恥ずかしいほどの水準にあると言う。
   先日来日時に、早く対処して欲しいとパチャウリ議長も訴えていたが、温暖化ガス排出量規制や排出量取引市場がまだ全く導入されていないのである。
   その原因は、某自動車会社のトップが会長の時に抵抗を示し、経団連が導入に反対し続けているからだと言う。
   産業界が、温室効果ガス排出の上限を定めるのを嫌い、削減目標を決めるのに強く反対して、
   企業の成長に影響する削減目標よりも、省エネを重視するエネルギー効率などの指標を産業セクターごとに導入すべきであると、企業の自主的な取り組みに任せていると言えば体が良いが、このことが世界の孤児の孤児たる由縁であるらしい。
   規制を強くすると、公害規制の緩い発展途上国に工場が逃げ出して空洞化するからダメだと言ったらしいが、日本財界自ら、途上国に公害を垂れ流せと言ったとしか思えず悲しい話である。

   ついでながら、忘れてはならないのは、日本の食料自給率が40%を切って大半を輸入に頼っていることだが、このことは、食料生産のためには厖大な水が必要であることから考えても、日本が世界の国から、水資源の凄まじい量を収奪しているのみならず、他国の環境汚染をドライブする大きな要因になっていることを肝に銘じておくべきである。

   政府自らが率先して温室効果ガス排出量の長期的な削減目標を掲げると同時に、欧米で活発化し始めているキャップ&トレード型の温室効果ガスの排出量取引市場を一日も早く開設することである。
   国や業界や企業ごとに排出量を割り当てて(キャップ)、削減で浮いた排出量の一部を売買(トレード)する方式だが、EUでは、2005年に、EU ETS(EU Emission Trading Scheme)がスタートして実際に機能しており、アメリカや大洋州にも拡大している。
   
   欧州政策研究所のエーゲンホッファ氏は、このEU ETSのキャップ&トレードの実際のスキームの運営や試行錯誤について問題点を浮き彫りにしながら詳細に説明していたが、日本が導入する時には、素晴らしいモデルが出来上がっているわけであるから、世界の趨勢に取り残されない為にも、早急に取り組むべきであろう。

   政策目標として2050年までに温室効果ガスの現在の排出量の80%削減を達成するようになっているが、「低炭素社会化」への国民挙げての取り組みが、日本のような国ではボランタリーベースではなく、ヨーロッパのように法制化しないと実現しないのかも知れない。
   省エネや公害対策等環境ビジネスにおいては、日本の技術が最先端を行くことは世界の認める所であり、このイノベーション指向を更に進めて、経済成長と環境保護の両立と言う二兎を追う成長戦略の推進が、最も日本に適したものづくり企業の使命であろう。
   

   
   
   
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