熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

国立能楽堂・・・3月特別公演 能・金春流「藍染川」ほか

2019年03月22日 | 能・狂言
   21日の国立能楽堂の特別公演は、
   能 知章 (ともあきら)  井上 裕久(観世流)
   狂言 しびり  茂山 千作(大蔵流)
   能 藍染川(あいそめがわ)  本田 光洋(金春流)飯冨 雅介

   特に、狂言「藍染川」は、国立能楽堂では初めて上演されると言う珍しい曲で、100分近くの大舞台で、楽しませて貰った。
 
   「藍染川」のストーリーは、次の通り。
   京に住む梅壺侍従という女(前シテ/本田光洋)が、宰府神主(ワキ/飯冨雅介)との間に生まれた子供梅千代(子方/中村帯雅)を連れて大宰府にやってくる。女が宿の男左近尉(ワキツレ/原大)に神主の家を訪ねると、自分はその家来だと言ったので、神主への手紙を託する。左近尉が、神主を訪ねると持仏堂で読経中だと言うので、その手紙を妻(茂山千五郎)に渡す。
   その手紙を読んだ妻は、怒り心頭に達して、自分で返事の偽手紙を書いて左近尉に渡して、宿から女を追い出せと命じる。
   神主の返事だと思った左近尉は、その手紙を女に渡し、喜んだ女はすぐに読んでみると、遭うことはできない、梅千代も子供だと思うな、すぐに都へ帰れと書いてあったので、落胆して嘆き悲しむ母を見て、梅千代は懸命に励ますが、女は死を決して、梅千代を、尼姿になるのでしばらく待てと言って待たせて、藍染川へ身を投げる。
   左近尉は、藍染川に投身した女が宿を追い出した女であったので、梅千代に告げると、梅千代も後を追おうとしたので、母の置手紙を見せて止める。
   そこへ、神主がやって来て、都からの女が子供を残して投身自殺したのを知り驚愕し、梅千代の持っていた手紙を見て、親子であることが分かって対面する。
   女を哀れんだ神主は、祝詞をあげて、女を生き返らせようとすると、天満天神(後シテ/本田光洋)が出現して、女を蘇生させたので、神主は、天神を称える祝詞を上げると、天神は消えて行く。

   女は、梅千代も大きくなったので、神主の跡継ぎを意図して、大宰府に赴いたのであろうが、すべからく、この能は、手紙がメイン・プレイヤー。
   最初の手紙は、神主の妻を怒らせて、親子の運命を暗転させ、次の手紙は、神主に、神主と梅千代の親子関係を証明させて、神主の祝詞で、母の命を蘇生させる。

   左近尉の機転の効かない不用意な対応で、京都での隠し妻が発覚して、子供まで連れて訪ねて来たのであるから、神主の妻が息巻くのは当然で、嫌がらせの偽手紙を書いて、神主の命令だと言って追い返すのもわかる。
   面白いのは、このような狂言回しのようなキャラクターは、いつも、狂言方の役割で、お豆腐狂言茂山家の当主千五郎が、わわしい女スタイルで登場し、パンチの利いた妻を演じて面白い。

   この能は、前シテと後シテが、異なり、前シテが入水して消えると、その遺骸は、小袖に置き換えられて、正先に広げられており、また、ラストシーンの母の再生も、地謡の表現で象徴される。
   後場で、小宮の作り物が出されて、その中から、威儀を正した後シテの天満天神が登場する。
   派手な舞はないが、風格のある神で、小天神の面のどこか愛嬌のある厳つい形相が如何にも優しい感じであり、流石に本田光洋師で、その折り目正しい優雅な舞が感動を呼ぶ。
   この舞台では、子方の中村帯雅君の健気で達者な芸が光っていて、ワキの飯冨雅介師の品のある神主が、中々様になっていて良かった。
   金春宗家ほかの地謡や囃子も素晴らしく、物語が比較的分かり易かったので、筋を追うのには苦労が少なかったが、いまだに、筋、筋と言って、筋に拘っている自分自身に、少し寂しい感じがしているのだが、大分、能が分かりかけてきているような気もしているので、まずまずであろう。
   
   能「知章」は、平家物語の巻九の「知章最期」からの脚色で、知盛と息子知章(シテ/井上裕久)の修羅能。
   狂言「しびり」は、主の堺への買い物命令を、太郎冠者が、しびれが切れて動けないと言って仮病を使う話。千五郎の父君千作の太郎冠者が派手な芸で笑わせる。
   能が2曲の舞台は少ないので、大分、上演時間が長かった。
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