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NHKの大河ドラマのファンと言えばファンなのだが、これまで、最初から最後まで完全に観続けたことはない。
しかし、この「光る君へ」は、完全に観た。
理由は、源氏物語、紫式部がメインテーマであったからである。
京都の大学に通い始めてから、古社寺散歩に興味を持ったのが切っ掛けで、平家物語と同時に源氏物語を読み愛読書になったのである。
源氏物語や紫式部に関する本は随分読んできたし、このブログでもブックレビューなどで触れている。
さて、今回の「光る君へ」だが、平安の王朝絵巻と言うか華麗な舞台が展開されていて興味深かったのだが、私が期待していたイメージとは少し違っていた。
意外だったというか、新しい発見があったり、教えられることも多かった半面、私が見たかったのは、「源氏物語」の醸し出す世界なり雰囲気であったので、それが殆どと言うほど感じられなかったのである。
末尾で、まひろが道長がいたからこそ書けたのだと述懐していたが、殆どこの舞台では光源氏と道長のイメージのダブりはないし、道長にも光源氏ほどの強烈な個性の表出もなかったし、全く別人物であった。
尤も、歴史の一角を切り取った紫式部と道長の物語であって、その殆どが大石静の創作のラブストーリーだと言うことであれば、私の期待外れも当然。
素晴らしい大河ドラマとして楽しめたので、それで良いのであろう。
このドラマのメインテーマは、まぎれもなく、道長とまひろの二人の恋物語である。幼い三郎とまひろの恋が導入部となり、道長がまひろに贈った幼い二人の出会いを描いた扇が何度もイメージアップされていたが、この直覚の愛が最後まで尾を引いているほど強烈であり、
実際には、道長と紫式部との間に男女関係があったかどうかさえ分からない世界に、作者は正面切って踏み込んだのである。
これはこれで創作の妙として面白いのだが、道長に対するまひろの思いが「光る君へ」と言うのなら、純愛一途の道長に対して、まひろの恋は半身であり腰が引けているのが気になっている。
あまりにも不埒で徹頭徹尾ドンファンであった光源氏に比べて、このドラマの道長や一条天皇が純愛一途で如何に優しいオノコであったことか、
それに、まひろが、あまりにも真っ当な平凡な常識人として描かれているので、あの強烈な源氏物語の作者だとどうしてイメージできようか、
そう思えば、まひろが道長とクンズホグレツ愛の交歓に明け暮れて、男女関係に大らかであった平安王朝の世界にのめり込んでいたとしても、不思議でなかったのかも知れない。だから、源氏物語を構想できた。と妄想している。
シェイクスピアが、なぜ、あれだけの凄い戯曲を書き得たのか、
紫式部が、どうして、前代未聞のあの凄い源氏物語を書けたのか、
私の疑問であり続けている。
大河ドラマ「光る君へ」は素晴らしいドラマであった。
まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)とのドラマチックで感動的な舞台展開、
最初から最後まで、俳優ぞろいの凄い舞台が秀逸だが、源倫子役の黒木華の名演が印象に残っている。
視聴率が問題となっているが、気にすることはない、それだけ、質が高くて観賞価値のある素晴らしいドラマであった証であって、大衆受けしなかっただけである。