
一昨日の「イル・トロヴァトーレ」のジプシーの老婆の熱演で印象的だったので、ガリヤ・イブラギモヴァのカルメンを聴きたくてなって、また、東京文化会館に出かけてプルゼーニュ歌劇場の「カルメン」を観た。
最近、ウイーン国立歌劇場、ベルリン・フィルのイースター、スカラ座、メトロポリタン・オペラ、ロイヤル・オペラ等を立て続けに観ているが、これ等のトップ・オペラ劇場の公演とは違って、地方の歌劇場のオペラには、それなりに独特の楽しみがあり、私は好きなので良く観に行く。
ブダペストでヤナーチェックの良く知らないオペラをハンガリー語で観たり、ドイツの地方都市で重厚なワーグナーを楽しんだり、とにかく、思いがけない楽しみが転がっており、それに、素晴らしいスターに出くわすことがある。
ヨーロッパには、一寸した地方都市でもオペラ劇場があり、文化遺産として大切に育てており、水準も結構高い。こんなところからオペラ界のスーパースターが生まれてくるのである。
期待に違わず、イブラギモヴァは、実に上手い、声量豊かな美声もそうだが、カルメンになりきったその演技力が秀逸である。
昨年、ニューヨークのメトロポリタンでオルガ・ボロディーナのカルメンを聴いたが、これとは別な、もっとスペインの風土の香りがする野性的で精悍なカルメンを演じていて、舞台展開の中でのカルメンの心の微妙な変化を上手く表現するなど実に心憎い歌唱と演技である。
ホセを歌ったヤン・アダメッツだが、マンリーコよりホセの方が適役で、カルメンを掻き口説くところなど誠実で実に上手い。
生気なくぶらりと出てくるカーテン・コールも、今回は満面に笑みをたたえて出てきた。本人も会心の出来であったのであろう。
私は、あのトーランドットのリューと同様ミカエラが好きな役どころであるが、この場合も、レオノーラを歌ったヴァレンティナ・チャヴダヴァーが素晴らしいアリアを聴かせてくれた。
第3幕の密輸業者の隠れ家岩場の場面で、ドン・ホセにお母さんが危篤だといって歌うところなど涙が出るほど素晴らしかったが、小さくて弱弱しい身体からくる印象だけではないであろう。
やはり、このオペラは闘牛士エスカミーリョに魅力がないと興味半減だが、すらりと長身の伊達男バリトン・ダリ・モルが、演技も歌も上手い。
このプルゼーニュ・オペラだが、確かに、オーケストラは音を外すし、歌手の技量ももう少しのところがあるが、とにかく、全体として、感激的な実に素晴らしい舞台を展開してくれた。ザルツブルグに呼ばれるだけの事はあると思う。
もっとも、今回は、第1幕で、少年達の可愛い合唱や行進がない等省略版なので、その点は、多少残念ではある。
セットについては、私の観たカルメンでは最もシンプルで、また、合唱団を総てチェコから連れて来た人々で構成した所為か、バックの群集や登場人物などが少なくて貧弱であった。
余談ながら、英米等他のオペラ劇場では、結構、コーラスや群集に人種が入り混じっていて有色人種が多いのだが、ここは皆コーカサス系であったのが印象に残っている。
私は、これまで、あっちこっちで色々なカルメンを観てきたが、やはり、今でも素晴らしいと思うのは、もう20年近く前になるが、ロンドンのコベントガーデンで観たアグネス・バルツアとホセ・カレーラスのカルメンである。
ホセ・カレーラスが入院して大手術を受ける前で、カラヤン方式を取ったのであろう、同じ演出のオペラが、メトロポリタンでも上演されて、これがDVDになっている。記念碑的なカルメンである。
第一幕で、カルメンが、最初に登場する場面、アグネス・バルツアが、舞台の左手から2階の回廊に飛び出てきた時の、メス豹のように精悍で野性的な姿は、脳裏に焼きついて離れない。
その後のハバネラの素晴らしさ。
それに、あのドン・ホセは、やはり、ホセ・カレーラスでなければならない。誠実で一途な好青年、あの頃の、ホセ・カレーラスは、実に初々しくて、運命に翻弄されてゆくドン・ホセを感動的に歌い演じていた。
これは、プラシド・ドミンゴでも、ルチアノ・パバロッティでもダメである。
私のもう一つ忘れられないカルメンの思い出は、マリア・カラスの最後のコンサート。
ジュゼッペ・ディ・ステファーノを伴ってジョイントのフェアウエル・コンサートを行って世界中を回っていたが、私は、フィラデルフィアで、これを聴いた。
最後に、マリア・カラスは、カルメンの第4幕の幕切れ直前のホセと諍いナイフで殺される場面をプログラムに組んだ。実に感動的な舞台で、この場面だけしか覚えていない。
あの精悍で美しい凍りつくような表情で歌っていたマリア・カラスのこのカルメンも私の思い出の中にある。
一昨年、ビアンテ・アランダ監督が、バス・ヴェガと言う素晴らしく美しい官能的な女優を起用して凄い映画「カルメン」を創った。全裸の濡れ場があるので、ビデオ店では、官能映画の棚に置いてあるとか、嘆かわしい限りである。
私は、上映された時すぐ見に出かけたが、今回WOWWOWで、また楽しむことが出来た。
メリメの小説から生まれたビゼーのオペラ「カルメン」は、オペラの忠臣蔵、とにかく、観るだけで楽しい。
最近、ウイーン国立歌劇場、ベルリン・フィルのイースター、スカラ座、メトロポリタン・オペラ、ロイヤル・オペラ等を立て続けに観ているが、これ等のトップ・オペラ劇場の公演とは違って、地方の歌劇場のオペラには、それなりに独特の楽しみがあり、私は好きなので良く観に行く。
ブダペストでヤナーチェックの良く知らないオペラをハンガリー語で観たり、ドイツの地方都市で重厚なワーグナーを楽しんだり、とにかく、思いがけない楽しみが転がっており、それに、素晴らしいスターに出くわすことがある。
ヨーロッパには、一寸した地方都市でもオペラ劇場があり、文化遺産として大切に育てており、水準も結構高い。こんなところからオペラ界のスーパースターが生まれてくるのである。
期待に違わず、イブラギモヴァは、実に上手い、声量豊かな美声もそうだが、カルメンになりきったその演技力が秀逸である。
昨年、ニューヨークのメトロポリタンでオルガ・ボロディーナのカルメンを聴いたが、これとは別な、もっとスペインの風土の香りがする野性的で精悍なカルメンを演じていて、舞台展開の中でのカルメンの心の微妙な変化を上手く表現するなど実に心憎い歌唱と演技である。
ホセを歌ったヤン・アダメッツだが、マンリーコよりホセの方が適役で、カルメンを掻き口説くところなど誠実で実に上手い。
生気なくぶらりと出てくるカーテン・コールも、今回は満面に笑みをたたえて出てきた。本人も会心の出来であったのであろう。
私は、あのトーランドットのリューと同様ミカエラが好きな役どころであるが、この場合も、レオノーラを歌ったヴァレンティナ・チャヴダヴァーが素晴らしいアリアを聴かせてくれた。
第3幕の密輸業者の隠れ家岩場の場面で、ドン・ホセにお母さんが危篤だといって歌うところなど涙が出るほど素晴らしかったが、小さくて弱弱しい身体からくる印象だけではないであろう。
やはり、このオペラは闘牛士エスカミーリョに魅力がないと興味半減だが、すらりと長身の伊達男バリトン・ダリ・モルが、演技も歌も上手い。
このプルゼーニュ・オペラだが、確かに、オーケストラは音を外すし、歌手の技量ももう少しのところがあるが、とにかく、全体として、感激的な実に素晴らしい舞台を展開してくれた。ザルツブルグに呼ばれるだけの事はあると思う。
もっとも、今回は、第1幕で、少年達の可愛い合唱や行進がない等省略版なので、その点は、多少残念ではある。
セットについては、私の観たカルメンでは最もシンプルで、また、合唱団を総てチェコから連れて来た人々で構成した所為か、バックの群集や登場人物などが少なくて貧弱であった。
余談ながら、英米等他のオペラ劇場では、結構、コーラスや群集に人種が入り混じっていて有色人種が多いのだが、ここは皆コーカサス系であったのが印象に残っている。
私は、これまで、あっちこっちで色々なカルメンを観てきたが、やはり、今でも素晴らしいと思うのは、もう20年近く前になるが、ロンドンのコベントガーデンで観たアグネス・バルツアとホセ・カレーラスのカルメンである。
ホセ・カレーラスが入院して大手術を受ける前で、カラヤン方式を取ったのであろう、同じ演出のオペラが、メトロポリタンでも上演されて、これがDVDになっている。記念碑的なカルメンである。
第一幕で、カルメンが、最初に登場する場面、アグネス・バルツアが、舞台の左手から2階の回廊に飛び出てきた時の、メス豹のように精悍で野性的な姿は、脳裏に焼きついて離れない。
その後のハバネラの素晴らしさ。
それに、あのドン・ホセは、やはり、ホセ・カレーラスでなければならない。誠実で一途な好青年、あの頃の、ホセ・カレーラスは、実に初々しくて、運命に翻弄されてゆくドン・ホセを感動的に歌い演じていた。
これは、プラシド・ドミンゴでも、ルチアノ・パバロッティでもダメである。
私のもう一つ忘れられないカルメンの思い出は、マリア・カラスの最後のコンサート。
ジュゼッペ・ディ・ステファーノを伴ってジョイントのフェアウエル・コンサートを行って世界中を回っていたが、私は、フィラデルフィアで、これを聴いた。
最後に、マリア・カラスは、カルメンの第4幕の幕切れ直前のホセと諍いナイフで殺される場面をプログラムに組んだ。実に感動的な舞台で、この場面だけしか覚えていない。
あの精悍で美しい凍りつくような表情で歌っていたマリア・カラスのこのカルメンも私の思い出の中にある。
一昨年、ビアンテ・アランダ監督が、バス・ヴェガと言う素晴らしく美しい官能的な女優を起用して凄い映画「カルメン」を創った。全裸の濡れ場があるので、ビデオ店では、官能映画の棚に置いてあるとか、嘆かわしい限りである。
私は、上映された時すぐ見に出かけたが、今回WOWWOWで、また楽しむことが出来た。
メリメの小説から生まれたビゼーのオペラ「カルメン」は、オペラの忠臣蔵、とにかく、観るだけで楽しい。
今早朝NHK BS2でフランスのローマ遺跡オランジェでの野外オペラ「カルメン」を放映していました。
ミョンフンのバトンが冴えた素晴らしい舞台でした。
私は、ヴェローナで観ましたが、広大な遺跡を舞台にしたグランド・オペラの公演は壮観で、また、別なオペラの楽しみを見せてくれます。
カルメンはヤナ・テトロバヴァー、ドン・ホセは
プラメン・プリコピエフでした。ミカエラのイヴァナ・シャコヴァーが良かったと思います。
BS2の「カルメン」も観ました。前回の藤原歌劇団
の原演出になったものですね。演奏も素晴らしかった
です。
バルツァとカレーラスのカルメンはロイヤルの来日公演で観ましたが、もうあれから20年も経っているなんて感慨無量です。