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この本のタイトルは、「The Idea of Technological Innovation: A Brief Alternative History」
この本は、技術イノベーション( Technological Innovation)を、概念として研究して、その出現、開発、および使用(emergence, development and use)を分析している。著者が特に主張しているのは、技術イノベーションの先駆的理論家は、学者ではなく、実務従事者(技術者、経営者、政策立案者、そうした人々に助言・勧告する人々)であって、そうした実務従事者たちの見方を、学者が、後から明確にし、理論化した。のだとする新しい歴史観を述べていることである。
面白いのは、1930年代から40年代に、ヨーゼフ・シュンペーターが、経済学にイノベーションという概念を導入した先駆者と目されているが、この概念は、当時既に、統計学者、経済学者、経済史家の間では当たり前に使われていて、シュンペーターはその一人に過ぎないと言っていることである。
経済学の概念で、先駆者なり発想の種はあったとしても、不思議ではないのであって、創造的破壊を軸にして、壮大な経済発展理論を展開して、イノベーション概念を魁けたシュンペーターの偉業は燦然と輝いていて、これは、言わずもがなの蛇足である。
さて、この本、パートI(技術イノベーション)では、主題の概念的な歴史を提供しながら、イノベーションを取り巻き変化する言説や学説を追跡および分析するために、適用された科学、結果、プロセス、およびシステムとして、イノベーションの多くの反復の歴史を検討して詳述している。パートII(アイデアからアクションへ)では、歴史的および現代的なイノベーションポリシーに目を向け、ポリシーの策定と戦略化において実務家が果たしてきた重要な役割を説明する。イノベーションの歴史学を効果的に書き直した先駆的な著者のアプローチは、イノベーション研究、社会学、科学技術の歴史の学者、政策立案者などの関係者達にとって大いに役立つであろうと言うのである。
タイトル通り、この本は、「イノベーション概念の現代史 」であって、イノベーションに対する概念なり、政府や関係機関の政策や対応の歴史的展開を時系列的に詳しく説いていて、興味深いのだが、これまで、クリステンセンやドラッカーなどの成長発展や経営戦略志向のイノベーション本を読み続けてきたので、多少戸惑いを感じながら読み進めた。
ところで、技術イノベーションのアイデアが構築され対策が取られたのは、1930年代だが、イノベーション政策が始まったのは、随分経った1980年代に入ってからで、国家戦略としてのイノベーション戦略の概念もこの頃からだという。
戦略も多岐にわたっており、それぞれの戦略に沿って、イノベーションはその意味を、厳密に技術的な問題からあらゆるものを包括する概念へ広がるようになってきた。
その結果、イノベーションの概念は、技術イノベーションが主体であったものが、最近では、イノベーションの概念が拡張してきている。
社会イノベーション、持続可能なイノベーション、責任あるイノベーションと言った新語が登場して、産業イノベーションや産業由来のイノベーションと言った言葉と競合して、技術イノベーションと覇を競い続けている。
このような名詞ではなく形容詞がイノベーションを定義するようになると、これは、「質」のことをさしていて、別のタイプのイノベーションとなる。
その特徴の第一は、社会活動的であり、決定過程の早い時期から様々な人々がイノベーションの検討に参加することを強調し、包摂的イノベーション、民主的イノベーション、フリーイノベーションと言った形がえられ、第二には、成果の側では、社会活動、倫理、環境に力点を置き、道徳的な要請が入り、イノベーションは、社会的で、責任があり、持続可能でなければならない。ことである。
システムとしてのイノベーションについては、技術変革の大半、イノベーションの大半、発明の大半、技術の普及の大半は、需要によって刺激されて生まれるという。
スティーブ・ジョブズは、消費者は何を欲しがっているのか分からないと言ってサプライ・プッシュのイノベーションを説いており、シュンペーターの創造的破壊も、需要か供給かは定かではないが、公共部門や社会イノベーションに関しては、イノベーション政策や戦略が指標となるので、ターゲットとしての需要要因が重要性を占めることとなろう。
ゴダンは、この本の冒頭で、「この何十年かで、技術イノベーションは、この社会の新たな宗教となり、現代の信条あるいは信仰となった。イノべーションは、我々が抱える社会経済的な問題すべての解決策であるというわけだ。」と書いている。
宗教かはどうかはともかく、例えば、地球環境の破壊を止めるためにも、まさに、イノベーション頼み、
シュンペーターが説く創造的破壊による技術イノベーションは、経済社会の成長発展にとって必須としても、今日のイノベーションは、持続可能な宇宙船地球号、そして、自由平等平和等を旨とする民主主義を死守するためにも、高邁なイノベーション政策及び戦略が求められている。と言えよう。
今や、途轍もなく拡大解釈され、信仰にもなったというイノベーションの使命は、極めて大きくなった。
この本は、技術イノベーション( Technological Innovation)を、概念として研究して、その出現、開発、および使用(emergence, development and use)を分析している。著者が特に主張しているのは、技術イノベーションの先駆的理論家は、学者ではなく、実務従事者(技術者、経営者、政策立案者、そうした人々に助言・勧告する人々)であって、そうした実務従事者たちの見方を、学者が、後から明確にし、理論化した。のだとする新しい歴史観を述べていることである。
面白いのは、1930年代から40年代に、ヨーゼフ・シュンペーターが、経済学にイノベーションという概念を導入した先駆者と目されているが、この概念は、当時既に、統計学者、経済学者、経済史家の間では当たり前に使われていて、シュンペーターはその一人に過ぎないと言っていることである。
経済学の概念で、先駆者なり発想の種はあったとしても、不思議ではないのであって、創造的破壊を軸にして、壮大な経済発展理論を展開して、イノベーション概念を魁けたシュンペーターの偉業は燦然と輝いていて、これは、言わずもがなの蛇足である。
さて、この本、パートI(技術イノベーション)では、主題の概念的な歴史を提供しながら、イノベーションを取り巻き変化する言説や学説を追跡および分析するために、適用された科学、結果、プロセス、およびシステムとして、イノベーションの多くの反復の歴史を検討して詳述している。パートII(アイデアからアクションへ)では、歴史的および現代的なイノベーションポリシーに目を向け、ポリシーの策定と戦略化において実務家が果たしてきた重要な役割を説明する。イノベーションの歴史学を効果的に書き直した先駆的な著者のアプローチは、イノベーション研究、社会学、科学技術の歴史の学者、政策立案者などの関係者達にとって大いに役立つであろうと言うのである。
タイトル通り、この本は、「イノベーション概念の現代史 」であって、イノベーションに対する概念なり、政府や関係機関の政策や対応の歴史的展開を時系列的に詳しく説いていて、興味深いのだが、これまで、クリステンセンやドラッカーなどの成長発展や経営戦略志向のイノベーション本を読み続けてきたので、多少戸惑いを感じながら読み進めた。
ところで、技術イノベーションのアイデアが構築され対策が取られたのは、1930年代だが、イノベーション政策が始まったのは、随分経った1980年代に入ってからで、国家戦略としてのイノベーション戦略の概念もこの頃からだという。
戦略も多岐にわたっており、それぞれの戦略に沿って、イノベーションはその意味を、厳密に技術的な問題からあらゆるものを包括する概念へ広がるようになってきた。
その結果、イノベーションの概念は、技術イノベーションが主体であったものが、最近では、イノベーションの概念が拡張してきている。
社会イノベーション、持続可能なイノベーション、責任あるイノベーションと言った新語が登場して、産業イノベーションや産業由来のイノベーションと言った言葉と競合して、技術イノベーションと覇を競い続けている。
このような名詞ではなく形容詞がイノベーションを定義するようになると、これは、「質」のことをさしていて、別のタイプのイノベーションとなる。
その特徴の第一は、社会活動的であり、決定過程の早い時期から様々な人々がイノベーションの検討に参加することを強調し、包摂的イノベーション、民主的イノベーション、フリーイノベーションと言った形がえられ、第二には、成果の側では、社会活動、倫理、環境に力点を置き、道徳的な要請が入り、イノベーションは、社会的で、責任があり、持続可能でなければならない。ことである。
システムとしてのイノベーションについては、技術変革の大半、イノベーションの大半、発明の大半、技術の普及の大半は、需要によって刺激されて生まれるという。
スティーブ・ジョブズは、消費者は何を欲しがっているのか分からないと言ってサプライ・プッシュのイノベーションを説いており、シュンペーターの創造的破壊も、需要か供給かは定かではないが、公共部門や社会イノベーションに関しては、イノベーション政策や戦略が指標となるので、ターゲットとしての需要要因が重要性を占めることとなろう。
ゴダンは、この本の冒頭で、「この何十年かで、技術イノベーションは、この社会の新たな宗教となり、現代の信条あるいは信仰となった。イノべーションは、我々が抱える社会経済的な問題すべての解決策であるというわけだ。」と書いている。
宗教かはどうかはともかく、例えば、地球環境の破壊を止めるためにも、まさに、イノベーション頼み、
シュンペーターが説く創造的破壊による技術イノベーションは、経済社会の成長発展にとって必須としても、今日のイノベーションは、持続可能な宇宙船地球号、そして、自由平等平和等を旨とする民主主義を死守するためにも、高邁なイノベーション政策及び戦略が求められている。と言えよう。
今や、途轍もなく拡大解釈され、信仰にもなったというイノベーションの使命は、極めて大きくなった。