場を浄める教育実践 管理職自ら校舎を美化した結果

久々に教育実践の話題で書きます。

私の勤務する小学校は開校140年を越える歴史ある学校です。そのためでもないのですが、校舎が古くなり、改築することになります。もしかしたらその改築を支えるために私が赴任したのかもしれません。改築だからといって今の校舎を汚くしてよいとは思いません。汚い校舎に福は寄り付かないと感じています。

日本の著名な教育哲学者である森信三先生は、学校をはじめとする教育組織を再生させる三原則として、次の言葉を残しました。

「時を守り 場を浄め 礼を正す」

これを実践することで、どれだけ廃れた教育組織であっても再生するのだという教えです。かなり多くの学校で、この言葉は使われています。額縁に入れて、正面玄関に掲示している学校があることもたくさん見てきました。誤解があってはならないので書いておきますが、こうした掲示物のある学校が廃れているわけでもありませんし、私の勤務校も廃れているわけではありません。私の勤務校は、正直なところ、都内トップの学校だという自覚が、卒業生の方々、保護者の方々にある教育の旗頭のような学校です。それでもまだまだ上のステージに向けて再生できると私は感じるので、森信三先生の三原則のうちのひとつ、「場を浄める」を実行に移しました。何をしたのかというと、要するに、学校内の掃除をはじめたわけです。

「場を浄める」という言葉を教育に使おうと教師が思った時、おそらく多くの教師は“子供たちに浄めさせる”ためにはどうしたらよいだろうと「やらせる」ことを考えます。私の場合は、この逆を実践していきます。別に子供たちが場を浄めなくてもいい。まずは「場を浄める」と何が起こるのか、自分の心身をもって人体実験するところから教育実践を開始します。ですから今回も、誰にも言うことなく、一人静かに雑巾がけとホコリ払いを始めました。

この「一人掃除開始」の教育実践理論の裏付けのひとつに、ハワイの問題解決方法である「ホ・ポノポノ」の考え方も取り入れました。
ハワイに伝わる癒しの秘法 みんなが幸せになるホ・オポノポノ 神聖なる知能が導く、心の平和のための苦悩の手放し方
クリエーター情報なし
徳間書店

潜在意識へのアプローチ。学校集団の過去からの記憶にアクセスし、悪しき記憶をクリーニングしていく問題解決方法が「ホ・オポノポノ」です。この「ホ・オポノポノ」を実践する時のキーワードは、「ありがとう」「ごめんね」「ゆるしてね」「愛してる」の4つです。自分の体での人体実験を意識している私は、校舎に対して「ごめんね」の言葉を心に秘めて、学校内を雑巾がけしていきました。なんとか学校集団潜在意識レベルでの変革をするための手法です。

こうした学校マネジメントを実践していくにつけて、よく間違えてしまい、改革途中なのにあきめてしまうケースがほとんどです。その理由は、手法を学ぶ人というのは、悩み苦しんでいる人が多いため、短期で改革できるものと錯覚を起こしてしまいがちだからです。本格的な改革には、少なくとも3ヶ月間は時間が必要なのです。3ヶ月間、ねばり強く「クリーニング」していける意思があるからこそ改革の波が静かに起こるのです。

こうして私が単独で、学校の美化運動を起こしてから2週間が過ぎました。その間、子供たちからも、大人からも私にかかる言葉が変わってきました。

「先生、どうして掃除しているんですか?」
という、教員も子供たちも同じように、疑問から始まった言葉が、
「先生、ありがとうございます。」
に変わり、さらにはPTAの方から、
「私たちも掃除をしますから、掃除機を貸してください。」
という声があがるようになり、2週間たった今日は、とうとう4年生の子供たちから、
「先生、私たちがいる3階はピカピカにしたから見に来てください!!!」
と呼び止められるくらいになりました。
こうして2週間で、学校の何かが変わる手応えを得た、人体実験者・井上です。


ここで、平成26年にこのブログで私が紹介した「広島観音高校」の教育実践を紹介します。
まずは写真をご覧ください。

この写真は広島観音高校の畑喜美夫先生が指導し、2006年インターハイで日本一なった広島観音高校サッカー部の荷物です。「勝利の神は細部に宿る」という考え方からこうした荷物指導をされている。それも「こうしなさい」とは決して言わない。問いを投げかけ、子どもたちに考えさせ、自ら行動できるように仕向けている。心を整え、人間力を磨き、日常生活全てで強くなる。良い習慣は良い結果をもたらす。このような考えから荷物指導が行われているそうです。

辰巳ジャンプでもさっそく教育実践開始。
今日の新チームの子どもたちの荷物は、私が体育館に行った時に、この写真のような状況でした。

そこでミーティング開始。まずは観音高校の荷物写真を見せる。

私からの問いかけ。
「この写真を見て、感じたことを発表しましょう。」
子どもたちからの意見。
「荷物がきれいにならんでいて、すごいと思いました。」
「私たちの荷物はいつもきたないと思います。」
「こういう荷物の置き方をするチームの方が強いと思います。」
写真を見せただけで、いろいろな気づきが生まれます。

私から、
「どうしてこの写真を見せたんだと思う?」
子どもたち。
「荷物をきれいにするためです。」
「荷物をきれいにできれば、他のチームもビックリすると思います。」
私。
「では、5分間時間を取るから、今自分が感じたことを行動にしてみよう。」
子どもたちは、「はいっ!」と返事をして行動開始。
その後、私が何も指示しなくても、荷物がこの写真のようになりました。

小学生の真っ直ぐな心というのは高校生以上だなと感心しました。

「さて、今は気持ちが切りかわったから荷物がきれいになったんだけど、これを3週間続けることを宿題にします。家でも荷物をきれいにすることを毎日やって、3週間すると習慣になります。楽しみにしているからね。」
保護者の皆さん、家の中までは私に分かりませんので、子どもたちが宿題を忘れているようでしたら、広島観音高校の荷物写真を見せてあげてください。
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