地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

台湾高鉄あす開業……台鉄加油!

2007-01-04 18:48:09 | 台湾の鉄道


 新幹線技術の初の海外輸出として注目を集めてきた台湾高速鉄道 (台湾新幹線) の開業が、いよいよ明日に迫りました! 工期の遅れ、契約上の紛糾 (当初は全て欧州技術で造るはずが、李前総統のツルの一声で日本技術に変更し賠償沙汰に)、システムの複雑化 (信号システムには妥協として欧州技術を導入したことに伴う) といった問題に加え、本来であれば昨年のうちに開業しているはずが、初期的な故障・事故の連続により、その都度台湾交通部 (省) の正式な認可が先延ばしになるなどの産みの苦しみが続きましたが、ついに春節 (旧正月) 輸送を前に正式開業にこぎつけることに……。まずは順調に走り出すことによって台湾の人々に満足を与えると同時に、日本の鉄道技術の新たなショウウインドウ・日台友好の新たなシンボルとなることを願わずにはいられません。
 少なくとも、新幹線技術の海外営業運転第1号が、E2系「CRH」(China Railway Highspeed。今年4月から主要大都市間で一日数往復の運行開始) でなくて良かった……というのが正直なところです。何せ、中共は反日運動が自らに降りかかってくるのを恐れる余り、日本からシステムを導入した事実をひた隠しにして、実現のための日中双方のあらゆる努力に泥を塗っているだけでなく、フタを開ければ「我が国も世界の高速鉄道の仲間入りを果たした。我が国は偉大だ」ということのみ宣伝するに決まっているのですから。
 


 おっと話題がそれてしまった (^^;)。こうして台湾高鉄は走り始めるわけですが、それは同時に在来線を運営する台湾鉄路局 (台鉄) の地盤沈下を意味するわけで……。特に、台湾における大都市間長距離輸送の第一線を担ってきた西部幹線の自強号は決定的な打撃を受けることでしょう。そこで台鉄としては、今後も相当独占的な営業が見込めるものの道路網の整備が進む東部幹線に883系の台湾版「タロコ (太魯閣) 号」を導入して梃子入れを図るほか、西部幹線については都市近郊型の輸送体系へと転換を図り、既に大幅な列車種別の整理を図るなど、あの手この手を打っているようです。
 その結果、これまでの台鉄を象徴するいくつかの存在が危機にさらされているのも事実……。
 1枚目の画像は、1979年に登場して以来一貫して台鉄の女王的存在として君臨してきたEMU100形の自強号 (しかも釣掛! ^o^) ですが、既に年増の老女王という雰囲気 (^^;) が強まりつつあるこの車両は台北~高雄間の直通運用からは撤退し (確か)、台北~台中~彰化間の区間運用や臨時列車で限定的に走っているようです。そしてこれから先、老朽化もあって一体どうなることか……(-_-)。踏切事故対策で正面は強烈な警戒色となりながらも、優雅な車体の雰囲気は何物にも代え難い存在感があり、とにかく新幹線開業後も、新星タロコ号とともに台鉄のシンボルとして走り続けて欲しいものです。(※画像は台北近郊の山佳駅にて)
 いっぽう2枚目の画像は、自強・キョ光に次ぐ優等列車として、特に西部幹線を中心に運用されていた「復興号」。だいたいの格付けとしては……とにかくスピードが遅い急行列車といったところでしょうか。基本的にキョ光号と同じ雰囲気の冷房客車ながら、ややシートピッチが狭くビニール張りのリクライニングシートを装備し、台車も旧型客車の流用が多く、サービスが全体としてキョ光号よりもやや落ちるように設定されていました。しかし、何のかの言って冷房車で、しかも運賃もロングシートの通勤電車と同じで非常に安いため、いつ見ても混み合っている列車の代表格でした。そこで、台鉄としては混雑の元凶で割に合わない復興号を基本的に通勤電車と統合のうえ「区間快車」「区間車」という種別として本数を減らし、特に座席指定列車で走らせる場合だけ「復興」を名乗ることにしたようです。復興号用の客車自体は今のところまだ西部幹線や屏東線を中心として日常的に見られるようですが、台北近郊で長距離客と通勤通学客をゴチャゴチャに乗せながら堂々とした編成でやって来る光景も今後は次第に過去帳入りするのでしょうか……。(※画像は東部幹線用車両の車庫がある樹林駅にて)
 というわけで、輸送体系の激変に伴い今後消え行く存在への思いがどうしても先に立ってしまうのですが (-_-)、何はともあれ台鉄には危機をバネにして、旅情と便利さを兼ね備えた乗り物としてさらに発展して欲しいものだと思っています (^^)。