すっかり連載の間が開いてしまった8月のインドネシア遠征の記録……もちろん、インドネシア新幹線をめぐるゴタゴタに衝撃を受けたことが影響していないわけではありません。まぁこの問題につきましては、鉄ヲタ界の中で最も事情通でおられる落花生。様が既に的確この上ない総括をされておりますので、とくに敢えて何か門外漢が付け加える内容はございません。
しかし同時に「あちゃー」と思ったのは、この一件で迷走を続けたインドネシアが中国と契約することになってしまったことを以て、あたかも「インドネシア=反日」であるかのような単純極まりないネトウヨ思考が一時期ネット上に蔓延したことでしょうか。をいをい……そんな単細胞が日本の今後を左右するのであれば、これ以上怖いことはないだろう……と。インドネシアはインドネシアで、あちらの事情に応じていろいろな国と商売しているわけで、とりわけ現与党の大ボスの父親は「ナショナリズムとコミュニズムは調和するのだ」と宣って中共とズブズブだった歴史があり(そんな激しい中国傾斜があったからこそ、その後の反共反中クーデタも起こったという……)、いっぽう日本については、田中の角さんがジャカルタを訪れれば卵が飛んでくる時代があったかと思えば、今では多くの人が日本に親しんでくれているという有り難い状況もあり……(今回の決定は何かの間違いと思っている人も多いことでしょう)。そして最近のニュースを見ても、日本のM商事と華人デベロッパーがチカラン新都心の大開発を進める話とか、ジョコウィ政権がTPP加盟を目指す話とか、どちらともとれない曖昧な状況の中でいろいろな話があるわけです。そんなグダグダな中でちゃっかりと利益とイメージを伸ばすことこそ、日本にとって一番大事なのではないっすか?と愚考します。そんなことも分からないネトウヨが中国とインドネシアを云々するのは噴飯物でしかありませんなぁ~(以上の放言についてのコメントはご遠慮下さい)。
というわけで、そんなカオスなインドネシアだからこそ面白い。ここのところ新興国を襲う「中進国の罠」にインドネシアもはまりつつあり、経済成長鈍化が今後のインフラ投資にどう影響するか分かりませんが、少なくとも依然として不足しているインフラ建設を進めるために、日本も含めていろいろな国がからみ、そのからみ具合がさらなるカオスを作って行く、というものでしょう。
とりわけ鉄道という観点からみれば、完全に中国と一部華人資本だけで新幹線が経営されるということで、対抗を迫られるKAIは日本の在来線高速化技術を一層頼ってくれるかも知れませんし、あるいはそこに実績ある日本と米GEではないメーカーが絡んできて故障祭り(=という名のネタ祭り)を展開してくれるかも知れません。ウリナラHorec ACが僅か2ヶ月で全編成離脱したという衝撃的大失敗に続き、ドイツが絡んだKFWが結局長続きせず全車離脱し、続々とマディウンのINKAに送り返されているということで、電車に関しては日本勢が圧倒的に信頼を受けている中、今度のジョグジャカルタ地区電化でフランスがうまくやるのかどうか注目されますし、あるいは電車づくりの失敗でKCJから嫌われたINKAが、今度は中国中車と組んで中国臭い客車を導入しないとは言い切れません。
そんなカオスな中、日本が引き続き存在感を発揮し、インドネシアの人々の日本に対する好印象をつなぎ止めるのであれば、やはり首都ジャカルタにおける日本中古電車の存在感・広告塔としての役割は絶大なのだなぁ……と再認識させられます。とはいえ、今回の訪問時には205系が凄まじい勢いで増殖し、中央線高架では205系以外の電車が滅多に姿を現さないようになった分だけ、都営6000やJR103などと並んで東急8000系列もすっかり存在感が薄くなり、広告塔は完全に赤いマスクで編成数も多い千代田線6000系やJR205系に写ってしまったのだなぁ……と思います。そこで、これまで約10年にわたり (とくにメトロ7000以後のメトロ・JR時代になるまで) 日本中古電車を代表する広告塔であり続けた東急8000系列をねぎらうべく、数回に分けて現在の活躍の状況をアップして参ります。
まずは車番からして8003F! 石をぶつけられる機会が大幅に減った時代の寵児たる205系と比べると、車体の凸凹が随分と結構目立つように見えるなぁ……ということで、下手をすると引退も視野に入りつつあるのかも知れませんが (取りあえず全検に入るかどうかが運命の分かれ道)、一日でも永く走り続けてほしいものです……。