~あらすじ~
署長の右腕として活躍したエリート刑事・雨森の転任先は、一度も捜査本部が置かれたことのない動坂署。
そこは不祥事を起こした者や無能な警官を飼い殺すための“刑事の墓場”とささやかれていた。
ふてくされた雨森の初仕事は、痴話喧嘩が原因の些細な傷害事件。だが、やがて県警全体を揺るがす大事件に発展し、動坂署の危機にすね者たちがついに立ち上がる。
~感想~
無能とさげすまれていた刑事たちが、特技を活かして立ち上がる――という展開は王道ながら、軽妙なキャラとあいまって読ませてくれる。
が、ミステリとしての結構は弱い。唐突に出てきた感のある犯人や、特にないトリック、終盤でも伏線に転じることもなく空振りに終わる聞き込みが淡々と描かれたりと、ミステリと言うよりも刑事小説と呼んだ方がしっくりと来る。
しかし、せっかくの刑事たちの異能も、要所要所で絡むだけで、物語全体を支えるには物足りない。というか、何人かは動坂署に送られた理由も描かれず、手持ちの札を出し惜しみしてしまい、非常に物足りない。次作以降への伏線なのかもしれないが、単品として見る分には弱いのだ。最後に明かされる動坂署に秘められた秘密も脱力もので、乱歩章受賞以来、6年ぶりの長編にしては練り込み不足に見えてしまう。
ともあれシリーズ第一作としては及第点。登場人物たちは魅力的なだけに、次が楽しみな一作ではある。
06.10.18
評価:★★☆ 5
署長の右腕として活躍したエリート刑事・雨森の転任先は、一度も捜査本部が置かれたことのない動坂署。
そこは不祥事を起こした者や無能な警官を飼い殺すための“刑事の墓場”とささやかれていた。
ふてくされた雨森の初仕事は、痴話喧嘩が原因の些細な傷害事件。だが、やがて県警全体を揺るがす大事件に発展し、動坂署の危機にすね者たちがついに立ち上がる。
~感想~
無能とさげすまれていた刑事たちが、特技を活かして立ち上がる――という展開は王道ながら、軽妙なキャラとあいまって読ませてくれる。
が、ミステリとしての結構は弱い。唐突に出てきた感のある犯人や、特にないトリック、終盤でも伏線に転じることもなく空振りに終わる聞き込みが淡々と描かれたりと、ミステリと言うよりも刑事小説と呼んだ方がしっくりと来る。
しかし、せっかくの刑事たちの異能も、要所要所で絡むだけで、物語全体を支えるには物足りない。というか、何人かは動坂署に送られた理由も描かれず、手持ちの札を出し惜しみしてしまい、非常に物足りない。次作以降への伏線なのかもしれないが、単品として見る分には弱いのだ。最後に明かされる動坂署に秘められた秘密も脱力もので、乱歩章受賞以来、6年ぶりの長編にしては練り込み不足に見えてしまう。
ともあれシリーズ第一作としては及第点。登場人物たちは魅力的なだけに、次が楽しみな一作ではある。
06.10.18
評価:★★☆ 5