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ミステリ感想-『少年検閲官』北山猛邦

2007年02月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
全ての書物が駆逐されていく世界で『ミステリ』を求める少年クリス。
旅の果てにたどり着いた、森に囲まれた村では、『探偵』が村人を殺し首を切り取っていた。
『ミステリ』も犯罪も消えたはずの世界で、いったい誰が殺人を犯しているのか。


~感想~
舞台は書物が駆逐され、たび重なる洪水で終末の危機に瀕した世界。
犯罪をなくすために書物をなくすという発想や、それなのに映像メディアが全く発達せず、人々は検閲されたラジオを頼りに生活しているなど、設定自体に無理は多い。
『ミステリ』や『探偵』を失われた夢や財産のように語られるのもこっぱずかしく、一目見て「小鳩くんと小山内さん?」と言いたくなる表紙など、とっつきにくさは満点。
しかしプロットや真相はそれらと密接に関わり(もちろん表紙は関係ないが)、この世界でしかありえない動機・トリックを現出させてくれたのはいい。
ガジェット(ミステリの要素を細かく記した物体)を読めば不可能犯罪を作れるというゲーム的設定はやはり無茶であるし、書物の失われた世界で犯罪が起こる理由を説明するための、後付けに過ぎないであろう。だいたいメイントリックにあのガジェットはぜんぜん使われていない気がするのだが……。
ともあれ世界観と雰囲気だけでラストまで引っぱる魅力はある。続編が出たら読みたい。


07.2.5
評価:★★☆ 5
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