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ミステリ感想-『向日葵の咲かない夏』道尾秀介

2007年02月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
明日から夏休みという終業式の日、小学校を休んだS君の家に寄った僕は、彼が家の中で首を吊っているのを発見する。慌てて学校に戻り、先生が警察と一緒に駆け付けてみると、なぜか死体は消えていた。「嘘じゃない。確かに見たんだ!」混乱する僕の前に、今度はS君の生まれ変わりと称するモノが現れ、訴えた。――僕は、殺されたんだ。半信半疑のまま、僕と妹・ミカはS君に言われるままに、真相を探る調査を開始した。
(帯裏より転載)


~感想~
帯表に「分類不能、説明不可、ネタバレ厳禁!超絶・不条理ミステリ(でも、ロジカル)」とあるとおりのミステリ。
ジャンル分けするならば幻想ミステリだが、その実は予告通りに論理的な物語。
しかし全体に漂う不安定な空気、現実的な説明の付かない数々の出来事は、読者を混乱に陥れる。不条理をそのまま不条理のまま受け止めて読み進めても、事態は次々と錯綜していき、いったいなにを信じればいいのか解らなくなる。
だが真相はどこまでもロジカルに、あますところなく全てを語り尽くす。しかし語り尽くしてなお、そこにはなんとも言えない不安定な世界が現出してしまう。
全く救いのない、だがそれゆえに見事な幕引きまで、一息に読破。登場人物たちが隠し、あるいは嘘をついている事柄があまりに多く、解決ではげんなりしてしまったが、読了後、帯に記されたもうひとつの言葉が胸を貫く。本当に着地の巧い作家である。


07.2.8
評価:★★★☆ 7
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