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ミステリ感想-『首無の如き祟るもの』三津田信三

2007年05月06日 | ミステリ感想
~あらすじ~
奥多摩に代々続く秘守家の「婚舎の集い」。23歳になった当主の長男・長寿郎が、3人の花嫁候補のなかからひとりを選ぶ儀式である。
その儀式の最中、候補のひとりが首無し死体で発見された。犯人は現場から消えた長寿郎なのか? 一族の跡目争いもからんで混乱が続くなか、そこへ第二、第三の犠牲者がいずれも首無し死体で見つかる。
古くより伝わる淡首様の祟りなのか、それとも十年前に井戸に打ち棄てられて死んでいた長寿郎の双子の妹の怨念なのか――。


~感想~
シリーズ第三弾は現時点での最高傑作。今後「首切り殺人トリック」の金字塔・象徴として永劫に語られるだろう歴史的作品である。
ミステリ史における意義はともかくとして、本格ミステリとしても最高の結実を見せている。煩雑な事情聴取は表や幕間にまとめてしまい、事件と物語だけを追える構成も心憎い。
いつもながらに怪談さながらの怪異が連発し、事態が進行するほどに状況は錯綜していき、終盤では前作『凶鳥の如き忌むもの』ばりに不可解な点が列挙され、しかもその謎が「たったひとつの事実」によって全て砕かれるというのだからたまらない。
真相はどんでん返しを連発し、とんでもない真相が次から次へと明かされめまいを起こす寸前。最後はとどめとばかりに怪異に取り込まれ――。個人的には完璧と思われる着地には感動すら覚えた。
これぞミステリこれぞド本格、2007年の本格ミステリベスト1は早くも今作で決定か?


07.5.6
評価:★★★★★ 10
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