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ミステリ感想-『不気味で素朴な囲われた世界』西尾維新

2007年10月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
退屈な“日常”はいらない。 欲しいのは、“異常”――。時計塔が修理されない上総園学園の2学期の音楽室。そこから始まった病院坂迷路と串中弔士の関係。歪な均衡を保つ学園の奇人三人衆、串中小串、童野黒理、崖村牢弥。そして起こってしまった殺人事件。迷路と弔士による探偵ごっこの犯人捜しが始まり、崩れたバランスがさらに崩れていく……。これぞ世界に囲われた「きみとぼく」のための本格ミステリ。
※コピペ


~感想~
維新節とでもいうべき軽妙な会話。ぶっ飛んだキャラ造型。独自の世界観。
それらのおかげで作品としては成立しているが、ミステリに関してはもう、維新は枯れたと結論づけてしまっていいだろう。

トリック・動機・真相・ミスディレクション、全てが予想の範疇にとどまり、驚ける部分がない。ことに『クビシメロマンチスト』や前作『きみとぼくの壊れた世界』であれだけ見せてくれた、裏で進行している異常を日常で覆い隠す腕が、完全に衰えている。同じことをやっているだけになおさら劣化が強調されてしまった。
少しネタバレすると、流行りの「操りの犯罪」なのだが、ただ「実は操ってました」「実は黒幕でした」というだけで、黒幕が「具体的になにを仕掛けたのか」「どう操ったのか」がさっぱり見えてこない。
これでは普通にライトノベルを書いて、後付けで裏設定を足したのと大差ない。

果たされることのなかった維新は、ただただ風化していくのみ。とにかく残念である。


07.10.14
評価:★☆ 3
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