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ミステリ感想-『君の望む死に方』石持浅海

2008年03月20日 | ミステリ感想
~あらすじ~
私は君に殺されることにしたよ。
末期ガンを告知されたソル電機の創業者・日向貞則は社員の梶間晴征に、自分を殺させる最期を選んだ。彼には自分を殺す動機も権利もある。だが決して彼を殺人犯にはさせない。
幹部候補を対象にした、保養所での“お見合い研修”に梶間以下、4人の若手社員を招集。日向の思惑通り、舞台と仕掛けはととのった。
だが梶間に完全犯罪をさせるための計画は、ゲストとして招いた一人の女性の出現により微妙な齟齬をきたしはじめた……。


~感想~
話題をさらった『扉は閉ざされたまま』の続編的作品。
変則的な倒叙ミステリだが、真っ先に思いだすのはセガサターンの隠れた良作『金田一少年の事件簿』。これは金田一君になって謎を解くのではなく、犯人になって金田一君の魔手(?)から逃れるというもの。
思いも寄らないところから真相を見抜いてしまう金田一君の恐ろしさが、かえってその魅力を浮き彫りにするというマイナーながら楽しいゲームである。
本作はまさにそのミステリ版で、「自分を殺させるための計略」を裏で着々と練る語り手と、それを密かに阻止する探偵との静かな暗闘に引き込まれる。
が、前作と同じく結末がいただけない。
本作に限らず作者は(ネタバレ→)人殺しに許しを与える ことをよくするのだが、それは個人的に納得がいかない。踏み込むと厄介な問題なのでそれ以上は言及しないが、何度もくり返されるとうんざりしてくるのだ。
皮肉な結末は歌野晶午の某作を思わせ、どうも既知感がつきまとう。また個人的な問題だが、作者の合わない部分が色濃くにじみ出てしまった作品。合う人にはとことん合うだろう。


08.3.20
評価:★★★ 6
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