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ミステリ感想-『空白の殺意』中町信

2009年08月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
土手で女子高生の扼殺死体が発見される。その二日後、今度は同校の女性教師が謎めいた遺書を残して自殺する。そして行方不明だった野球部監督の毒殺死体が発見されるに及び、事件の背後に甲子園を目指して熾烈な闘いをくり広げる学校同士の醜い争いがあぶり出されて……。


~感想~
ここに仕掛けがあると警戒しすぎて伏線を見抜けてしまい、その伏線一つから謎がするすると解けてしまった。素直に読んでおけばよかったと後悔したのはあとの祭り、伏線・誤導が次々と目にとまり、終局まで意外性のないまま読了。ものすごく損をしてしまった。
しかし一発ネタにとどまらず、それを軸に論理的な解決と展開を仕込んだ、中町作品らしからぬ(?)丁寧な作品なのは間違いない。眉につばつけず素直に読んで騙されれば評価は倍増すること請け合いである。

追記
中町氏が死去していたことをいまさら知りました。長く不遇をかこっていましたが晩年に次々と作品を再刊行され脚光を浴びられたことはファンの端くれとしてうれしく思い、また氏にとっても喜ばしいことだったでしょう。
本格冬の時代にトラベルミステリの皮をかぶりつつも、本格魂にあふれた叙述トリックを頑なに仕掛けつづけた、隠れた巨星のご冥福をお祈りします。


09.8.8
評価:★★★ 6
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