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ミステリ感想-『ジェネラル・ルージュの凱旋』海堂尊

2010年04月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
歌姫が東城大学医学部付属病院に緊急入院した頃、不定愁訴外来担当の田口公平の元には匿名の告発文書が届いていた。
“将軍(ジェネラル)”の異名をとる、救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという。高階病院長から依頼を受けた田口は調査に乗り出すが……。


~感想~
いちおうミステリの範疇に属していたシリーズが大きくエンタメの方向に舵を切った。
それは失敗ではなく、明らかに良い方向に向かっている。
そういえばデビュー作の『チーム・バチスタの栄光』からしてトリック自体はどうでもよいものだったのだし、この桜宮サーガからトリックなんて不純物(?)を撤廃したところでマイナス要素になるわけがないのだ。
さらにこの作品のすごいところは、元々『ナイチンゲールの沈黙』と一体になった長編だったのを、長すぎるので二つに分割したにも関わらず、それぞれが単体として十分な魅力を備えているというところ。
しかも『ナイチンゲールの沈黙』と本作は同じ時間軸を共有しており、物語は同時進行で起きているので、読み比べればもっと楽しめるのだ。
しかもしかも、こちらでは探偵役(?)の白鳥はほとんど本筋に絡まず、脇役に徹しているのだから、このシリーズが白鳥という稀有のキャラクター抜きでさえ余裕で成立するという事実まで示しているのは本当に驚くべき点である。
ぱっとしない作家ばかり輩出していたこのミス大賞は、つくづくジャックポットを引き当てたものだと思い知らされた。


上巻10.4.7
下巻10.4.11
評価:★★★☆ 7
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