小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『インサート・コイン(ズ)』詠坂雄二

2013年04月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
フリーライターの柵馬はゲーム雑誌の企画で、日本ゲーム史に残るビッグタイトルを、搦め手から扱う記事を書くことになる。
マリオが追いかけたような動くキノコ。ぷよぷよの淡い思い出。ストⅡに匹敵する伝説のリアルファイト。シューティングゲームの必勝法。ドラクエⅢ最大の伏線。
青春をゲームとともに歩んだゲーマーに捧げる連作短編集。

~感想~
僕の年代は最もゲームを楽しめた年代であろう。
小学校の頃にファミコンの全盛期。中学に上がるとスーファミ、高校でプレステ、大学でプレステ2と、人生はゲームの発展とともにあったと言っても過言ではない。
生まれて初めてさわるゲームが3DSである今の子供がうらやましいと思うこともあるが、しかし今の子供は逆にファミコンで遊ぶことができないのだと思えば、やはり優越感のようなものを覚えてしまう。

自分の話はともかくとして、本作の作者はまさに僕と同い年であり、彼もまた人生=ゲームの発展だった口で、語られるゲームの話題はことごとく共感を呼ぶ。
読者には各編の題材となったゲームの知識が多少求められ、たとえば「そして回りこまれなかった」で、さしもの読み巧者のtaipeimonochromeさんでさえタイトルの真意はわからなかったように、それぞれのゲームの知識があるに越したことはないが、「知っていればより楽しめる」程度の味付けなのでさほど気にすることはない。
むしろ注意すべきは作者の傑作である『遠海事件』や『電氣人間の虞』のような鋭いトリックは無いため、ミステリとして過度な期待を抱かないことであろう。それこそ本作はゲームの話をすることが目的で、ミステリ要素は味付け程度の短編も多々ある。

ここからは内容から離れるが、本の宣伝というものは年々腐っていくようで、本作にも「この本を読んで泣け。これが青春だ」だの「三度、泣いた」だの●みたいな宣伝が書かれている。もちろんどんな感想を抱かれようとも個人の勝手であるし、泣けなければ小説じゃないとのたまうスイーツ(笑)読者を獲得したいのか知らないが、『リロ・グラ・シスタ』や『遠海事件』や『電氣人間の虞』を読んできたファンなら御存知の通り、詠坂雄二に「泣き」を求めるなんざ頭が【禁則事項です】んじゃなかろうかと思えてならない。


12.
評価:★★★ 6
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