~あらすじ~
風もないのに大木が揺れ、魚たちが大量に死に、海が真っ赤に染まり、土中からは死者の付けていた鈴の音が……。
かつての「よそもの殺し」の島に伝わる数々の綺譚。
そして現代でも繰り返される不可解な島民の連続死の謎に自称名探偵・海老原浩一が迫る。
~感想~
小島正樹に求める物が全部入りの贅沢な一冊。
冒頭からとうてい現実の出来事とは思えない怪異がいくつも語られるが、それを聞いたそばから解決してしまう海老原探偵のやりすぎぶりも健在。
ただし今回はせっかくの解決を終盤まで明かそうとはしないのだが、もちろんそれは物語上の要請であるし、なによりラストのたたみ掛けるような解決の連打によって爽快感も演出している。
トリックも本格ミステリのありとあらゆるパターンを一冊で網羅してやろうと言わんばかりの多種多様さで、しかし同様の試みをしたデビュー作『十三回忌』のような、むりやり詰め込んだ感はほぼ皆無。とにかく無駄のない構成で、読みながら引っかかった不自然な描写やセリフはことごとく伏線であり、全ての綺譚が現代の一連の事件へとつながっていく構図も巧みで、作家としての腕を上げたと実感させてくれる。
それでいて「海から現れた灰色の木槌が甲冑武者の乗った船を砕き、武者が海上を疾走する」という奇想のかたまりのような謎の、あまりにバカすぎる真相には稚気もうかがえる。トリックで声を出して笑ったのは久々である。
小島正樹ファンにはマスト、古き良き本格ファンにもベストの、ザ・本格ミステリ。これだけやりすぎてどうして知名度も評価も低いのか、やはり理解できない。
13.4.12
評価:★★★★☆ 9
風もないのに大木が揺れ、魚たちが大量に死に、海が真っ赤に染まり、土中からは死者の付けていた鈴の音が……。
かつての「よそもの殺し」の島に伝わる数々の綺譚。
そして現代でも繰り返される不可解な島民の連続死の謎に自称名探偵・海老原浩一が迫る。
~感想~
小島正樹に求める物が全部入りの贅沢な一冊。
冒頭からとうてい現実の出来事とは思えない怪異がいくつも語られるが、それを聞いたそばから解決してしまう海老原探偵のやりすぎぶりも健在。
ただし今回はせっかくの解決を終盤まで明かそうとはしないのだが、もちろんそれは物語上の要請であるし、なによりラストのたたみ掛けるような解決の連打によって爽快感も演出している。
トリックも本格ミステリのありとあらゆるパターンを一冊で網羅してやろうと言わんばかりの多種多様さで、しかし同様の試みをしたデビュー作『十三回忌』のような、むりやり詰め込んだ感はほぼ皆無。とにかく無駄のない構成で、読みながら引っかかった不自然な描写やセリフはことごとく伏線であり、全ての綺譚が現代の一連の事件へとつながっていく構図も巧みで、作家としての腕を上げたと実感させてくれる。
それでいて「海から現れた灰色の木槌が甲冑武者の乗った船を砕き、武者が海上を疾走する」という奇想のかたまりのような謎の、あまりにバカすぎる真相には稚気もうかがえる。トリックで声を出して笑ったのは久々である。
小島正樹ファンにはマスト、古き良き本格ファンにもベストの、ザ・本格ミステリ。これだけやりすぎてどうして知名度も評価も低いのか、やはり理解できない。
13.4.12
評価:★★★★☆ 9