~あらすじ~
カサブランカを訪れた男は機内で会ったフランス人女性に心を奪われる。しかし甘美な夜を過ごした翌日、見知らぬ男に撃たれ――「砂のアラベスク」
奇術大会のためスペインを訪れた一行。男は人妻に心を奪われるが、彼女の胸には倒錯した想いがあった――「ソンブラの愛」
何から何まで自分を真似しようとする若いモデル。彼女は女である自分に想いを寄せており――「夜の人形」
商売敵同士の家に産まれた男と女。死の床に臥した女は、自身の若い頃を撮影した8ミリを形見として男に託す――「裸の真波」
~感想~
恋愛小説というジャンルは僕にとって最も興味のない部類なのだが、こと泡坂妻夫の手に掛かればそれが忘れ難い一編となる。
表題作「砂のアラベスク」はミステリとしての側面が最も色濃い一編で、真相が明かされるやそれまで見えていた構図が一変し、全く違う物語が描かれる奇術さながらの手管が素晴らしい。
「ソンブラの愛」は作者が実際に参加した奇術大会を基に、泡坂ミステリではおなじみの「奇妙な論理」と言い換えられるだろう、倒錯した恋愛譚が語られる。一つ間違えば恋愛小説として成立しない異様な思考を、論理として、恋愛感情の一種として、巧みに組み上げるのはさすがである。
「夜の人形」、「裸の真波」は中編ばりの分量だった前二編と比べ短いものの、「夜の人形」はやはり奇妙な論理を、「裸の真波」はこれぞ泡坂作品と言いたくなる、一作限りの登場人物たちに血の通った個性を持たせ、それぞれ深い印象を残す。
今さらこんなわかりきったことを言う必要は全く無いが、やはり泡坂妻夫は何を書いても面白い。
13.4.16
評価:★★★☆ 7
カサブランカを訪れた男は機内で会ったフランス人女性に心を奪われる。しかし甘美な夜を過ごした翌日、見知らぬ男に撃たれ――「砂のアラベスク」
奇術大会のためスペインを訪れた一行。男は人妻に心を奪われるが、彼女の胸には倒錯した想いがあった――「ソンブラの愛」
何から何まで自分を真似しようとする若いモデル。彼女は女である自分に想いを寄せており――「夜の人形」
商売敵同士の家に産まれた男と女。死の床に臥した女は、自身の若い頃を撮影した8ミリを形見として男に託す――「裸の真波」
~感想~
恋愛小説というジャンルは僕にとって最も興味のない部類なのだが、こと泡坂妻夫の手に掛かればそれが忘れ難い一編となる。
表題作「砂のアラベスク」はミステリとしての側面が最も色濃い一編で、真相が明かされるやそれまで見えていた構図が一変し、全く違う物語が描かれる奇術さながらの手管が素晴らしい。
「ソンブラの愛」は作者が実際に参加した奇術大会を基に、泡坂ミステリではおなじみの「奇妙な論理」と言い換えられるだろう、倒錯した恋愛譚が語られる。一つ間違えば恋愛小説として成立しない異様な思考を、論理として、恋愛感情の一種として、巧みに組み上げるのはさすがである。
「夜の人形」、「裸の真波」は中編ばりの分量だった前二編と比べ短いものの、「夜の人形」はやはり奇妙な論理を、「裸の真波」はこれぞ泡坂作品と言いたくなる、一作限りの登場人物たちに血の通った個性を持たせ、それぞれ深い印象を残す。
今さらこんなわかりきったことを言う必要は全く無いが、やはり泡坂妻夫は何を書いても面白い。
13.4.16
評価:★★★☆ 7