小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

非ミステリ感想-『秘花』連城三紀彦

2014年07月20日 | ミステリ感想
  



~あらすじ~
「お父さん、浮気してるわよ」中学三年の娘・水絵の言葉に動揺する知子。
一方で夫の行広には「お母さんが浮気している」と吹き込む娘の胸中を図りかねる。
そして亡き母ゆいと夫の関係について煩悶する知子に、水絵は思いもよらない告白をする。


~感想~
ゆい、知子、水絵ら三世代の女たちをつなぐ一代記と呼べば据わりがよく、下巻のほぼ全編にわたって描かれる遊郭の女郎の日々を描いた回顧録が、本格バカの自分にすら読ませてしまうもので、ぶっちゃけカバー裏に書かれたあらすじ以上のことは起こらないし、展開に裏切りがないどころか本筋だったはずの話はまるっきり解決しないまま幕を閉じるのだが、描写の上手さはもちろんのこと比喩の的確さ、巧みさに唸るばかりで、肝心なところはいろいろと置き去りにしながらも、ある一つの疑問だけは氷解させるラストまで、熟練の筆さばきに浸るのがただただ幸福。
正直言って連城三紀彦が書いていなければ絶対読むことはないし、間違いなく酷評しているだろう物語だが、自分にとってここまで連城の文章が心地良いものだとは思わなんだ。
まるっきり何もかも解決していないのは難点ながら、ファンならば必読とまでは言わないが、読んで損のない作品である。


上巻 14.7.4
下巻 14.7.19
評価:★★★ 6
コメント