~あらすじ~
赤死病の館の殺人
土砂降りのなか遭難しかけた新島ともかがたどり着いた奇妙な館。
階段状に区切られた部屋はエドガー・アラン・ポーの作品のように赤・青・緑など一色で塗りつぶされていた。
一泊の宿にありついたともかは、夜半に黒い影を目撃。そして翌朝、死体が現れ二人の人物が失踪していた。
疾駆するジョーカー
連続暴行殺人の容疑をかけられた少年と、それを冤罪だと主張する弁護士ら。
彼らが宿泊する屋敷にトランプから抜け出したようなジョーカーが神出鬼没に現れる。
深津警部の不吉な赴任
キャリアが田舎の警察署に赴任し、出迎えに大わらわになる署員たち。
着任早々に墜落事件が発生し、意見を戦わせるが……。
密室の鬼
殺害予告された傲岸不遜な教授。
衆人環視の中、腹を刺された彼のそばにたたずむ出来損ないのロボット。
果たして誰がいかにして密室を破ったのか。
~感想~
森江春策シリーズの短編集。
魅力的な謎が明快に解かれるものの、どうしても腑に落ちない点や物足りなさが目につく。
真相の根幹に関わるネタバレは避けたが、一部の展開や犯行方法には言及するので以下、要注意。
赤死病の館
表題作にふさわしい好編。館の奇怪な構造や意匠にもっともな理由をつけ、シンプルに密室を作り上げた。
もし●●●●●未経験で●●の愛用者だったらどうするんだという疑問は残り、まずこの作品に限った話ではないし、芦辺作品にはよくあることだが普通に共犯者がいるのは不満ながら、予想を裏切る終盤の展開も見事に決まった。
疾駆するジョーカー
こちらもある些細な錯誤を利用したシンプルな密室に好感。
一方で二編続けて鍵穴から睡眠薬を垂らし(古典には詳しくないのだがこれってそんなにメジャーな方法だろうか?)共犯者も大活躍するのはどうかと思うが。
深津警部の不吉な赴任
芦辺作品には珍しい(と思う)あるトリックだけに留まらず、立て続けにどんでん返しを仕込んだ良作。
短い分量で見えていた構図を反転させ、事件の様相を一変させる手管はさすが。
密室の鬼
隙のない密室を単純なトリックで破り、ばらまかれた伏線がことごとく回収された――だけのような。以下↓文字反転↓
例によって共犯者の占めるウエイトが重すぎるし(刑事以外の全員が共犯者かよ)いざとなれば簡単に握りつぶせる素材(??)で作られたお面っていったいなんだ。
ロボットもわざわざ動いてどうでもいい役割をこなすし、被害者を刺したトンデモ博士がつぶさに犯行を自供していたらトリックも即座にバレる。
そのまま通報すれば無罪なのにわざわざ事件に加担して罪をひっかぶるおもちゃ屋の心理も意味不明だし、致命傷を負いながら現場まで徒歩でたどり着く被害者もお達者すぎ、と何から何まで強引すぎて、牽強付会というレベルじゃないだろ。
また余談ながら発刊当時はほとんど陰謀論同然で、「赤死病の館」ではテーマそのもの、「密室の鬼」では脈絡もなく言及されるある話が、2014年現在から見ると全て「仰るとおり」になっているのは確かに興味深かった。
14.7.25
評価:★★☆ 5
赤死病の館の殺人
土砂降りのなか遭難しかけた新島ともかがたどり着いた奇妙な館。
階段状に区切られた部屋はエドガー・アラン・ポーの作品のように赤・青・緑など一色で塗りつぶされていた。
一泊の宿にありついたともかは、夜半に黒い影を目撃。そして翌朝、死体が現れ二人の人物が失踪していた。
疾駆するジョーカー
連続暴行殺人の容疑をかけられた少年と、それを冤罪だと主張する弁護士ら。
彼らが宿泊する屋敷にトランプから抜け出したようなジョーカーが神出鬼没に現れる。
深津警部の不吉な赴任
キャリアが田舎の警察署に赴任し、出迎えに大わらわになる署員たち。
着任早々に墜落事件が発生し、意見を戦わせるが……。
密室の鬼
殺害予告された傲岸不遜な教授。
衆人環視の中、腹を刺された彼のそばにたたずむ出来損ないのロボット。
果たして誰がいかにして密室を破ったのか。
~感想~
森江春策シリーズの短編集。
魅力的な謎が明快に解かれるものの、どうしても腑に落ちない点や物足りなさが目につく。
真相の根幹に関わるネタバレは避けたが、一部の展開や犯行方法には言及するので以下、要注意。
赤死病の館
表題作にふさわしい好編。館の奇怪な構造や意匠にもっともな理由をつけ、シンプルに密室を作り上げた。
もし●●●●●未経験で●●の愛用者だったらどうするんだという疑問は残り、まずこの作品に限った話ではないし、芦辺作品にはよくあることだが普通に共犯者がいるのは不満ながら、予想を裏切る終盤の展開も見事に決まった。
疾駆するジョーカー
こちらもある些細な錯誤を利用したシンプルな密室に好感。
一方で二編続けて鍵穴から睡眠薬を垂らし(古典には詳しくないのだがこれってそんなにメジャーな方法だろうか?)共犯者も大活躍するのはどうかと思うが。
深津警部の不吉な赴任
芦辺作品には珍しい(と思う)あるトリックだけに留まらず、立て続けにどんでん返しを仕込んだ良作。
短い分量で見えていた構図を反転させ、事件の様相を一変させる手管はさすが。
密室の鬼
隙のない密室を単純なトリックで破り、ばらまかれた伏線がことごとく回収された――だけのような。以下↓文字反転↓
例によって共犯者の占めるウエイトが重すぎるし(刑事以外の全員が共犯者かよ)いざとなれば簡単に握りつぶせる素材(??)で作られたお面っていったいなんだ。
ロボットもわざわざ動いてどうでもいい役割をこなすし、被害者を刺したトンデモ博士がつぶさに犯行を自供していたらトリックも即座にバレる。
そのまま通報すれば無罪なのにわざわざ事件に加担して罪をひっかぶるおもちゃ屋の心理も意味不明だし、致命傷を負いながら現場まで徒歩でたどり着く被害者もお達者すぎ、と何から何まで強引すぎて、牽強付会というレベルじゃないだろ。
また余談ながら発刊当時はほとんど陰謀論同然で、「赤死病の館」ではテーマそのもの、「密室の鬼」では脈絡もなく言及されるある話が、2014年現在から見ると全て「仰るとおり」になっているのは確かに興味深かった。
14.7.25
評価:★★☆ 5