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ミステリ感想-『鳥人計画』東野圭吾

2016年01月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
将来を嘱望される天才スキージャンパー楡井明が毒殺された。
鉄壁のアリバイに阻まれ捜査が進まない中、警察には犯人を名指しする告発状が届く。
一方、急激に記録を伸ばすジャンパーが現れ、その背後に楡井の姿が見え隠れする。

89年このミス15位、吉川英治文学新人賞・候補


~感想~
本作の刊行は1989年だが、リレハンメル五輪で原田雅彦が失速し日本中からバッシングされたのがその5年後、原田が雪辱を果たし日本が団体で金メダルを獲得した長野五輪が9年後と、ジャンプがまだマイナー競技の頃に書かれたもので、まずその先見性に驚かされる。
加えてジャンプの魅力と発展、その未来まで描かれており、事件は倒叙形式で犯人が明らかな形で進みながら、告発状を出したのは誰か、アリバイトリックの方法は何か、とミステリ要素でも最後まで興味を引き、結末では意外な真相が……と例によってミステリ作品のお手本のような出来栄えで、さすが東野圭吾と唸るばかり。

またこの頃はジャンプ後進国だった日本が10年足らずで頂点に上り詰めたという現実、鳥人の異名で作中にも登場するニッカネンが殺人未遂で逮捕されているという驚き、船木や葛西がいまだ第一線で活躍していることなど、スポーツの世界はやはり何が起こるかわからない、と改めて感心した次第。


16.1.13
評価:★★★ 6
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