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ミステリ感想-『黒と愛』飛鳥部勝則

2018年02月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
亜久直人は幽霊に怯える友人に頼まれ、心霊番組のロケハンに同行し、奇傾城を訪れる。
悪魔的な趣味に彩られた城内で、撮影隊の一人が密室で首を切られて殺される。
犯人は復員兵の幽霊なのか?


~感想~
全作読んでないがたぶん作者の集大成。
冒頭1ページ目、いきなり瀕死の少女が軒先に転がるが、家主の男は意に介さず帰って寝ようとするホットスタートを切る。
その後も隙あらば幽霊や怪人が顔を出し、伏線かどうかも怪しい怪異譚が次々と語られ、登場人物はたいがいが一人や二人は殺しているだろう狂人揃い。
密室殺人の犯人はあっさり指摘され、すぐさま犯人視点で過去編が始まり、やべえ少女と互角以上にやべえお友達らの超やべえ日常が語られ、現在に戻るとお待ちかねの現物が全員集合しバトルロワイヤルを繰り広げる。
終盤にはどんでん返しというか、はっきり言えば「台無し」な展開が4回くらい重なり、ただでさえ飛鳥部勝則を読もうという鍛えられた読者をさらにふるいに掛けるような、全く手加減なしのイッツ・ア・飛鳥部ワールドで終始ニヤニヤしながら読んだ。

あの「堕天使拷問刑」よりもさらに作者の趣味を全開にした変態小説……いや怪作だが、豪快なトリックあり、巧みな誤導ありとミステリとしてももちろんのこと優れている。
さらには先に刊行された「ラミア虐殺」の姉妹編でもあり、後日談としても楽しめる。しかもこの両作はとある特殊な構成から、どちらを先に読んでも双方でネタバレを踏んでしまうという面白い関係にあり、個人的には「ラミア虐殺」を先に読むことを勧めるが、「黒と愛」を先に読んでも全く問題はないだろう。どちらも入手困難なのは問題であるが。

ミステリ的には「堕天使拷問刑」に軍配を上げるものの、やりすぎ具合と個人的な好みでは「黒と愛」の方が上だが、どちらも甲乙つけがたいところ。ともあれ作者のファンならば絶対に読むべき渾身の一作である。


18.2.22
評価:★★★★ 8
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