~あらすじ~
ボストン美術館で老人が刺殺された事件が発生。
一方、日本では津田良平が「葛飾北斎は隠密だった」という奇説の調査を大手出版社に依頼される。
調査は順調に進み、北斎の未発見作と思われる作品も掘り出され、順風満帆かに見えたが……。
1987年日本推理作家協会賞、文春6位
~感想~
まず本作は「写楽殺人事件」の続編であり、文庫版20ページ目で前作のネタバレが余すところなくされているので要注意。
また解説ではおなじみ中島河太郎による本作の完全ネタバレもされており、忙しすぎる現代人もあわせて30ページほどで2作分の内容が把握できてしまうが、絶対試さないように。
内容に戻ると、写楽の正体よりもエンタメ性に富んだ北斎隠密説それ自体が非常に面白く、次から次へと示される傍証や状況証拠(に見えるもの)に驚かされ、読み終える頃には北斎=隠密だと納得させられることだろう。
ビッグネームがごろごろ現れては説自体に絡んできて、歴史好きにはより一層楽しめた。
一方で中盤からは北斎を脇に追いやり、とある事件が描かれ、期待通りに冒頭のボストンでの事件とも絡んでくるのだが、こちらも前作と同じく筋が入り組み過ぎの感はあるものの、様々な思惑が絡み合ったなかなかに読ませるもので、終盤には北斎からも殺人事件からも離れた悲劇が描かれ、哀切ある告白で締められる頃には隠密説もわりとどうでも良くなってしまった。
とはいえ北斎と事件の両輪で最後まで読者の興味を引くことに成功しており、また前作「写楽殺人事件」の後日談としても面白い、力作であることは間違いない。
なおシリーズ完結編となる「広重殺人事件」もあるが、前2作(特に北斎殺人事件)を台無しにするような、危うく椅子から転げ落ちそうになった驚愕のあらすじが書かれており、読んだら全然別物かもしれないが、特にランクインも受賞もしていないし、あえて読まなくてもいいかなと思っている次第である。
18.10.1
評価:★★★★ 8
ボストン美術館で老人が刺殺された事件が発生。
一方、日本では津田良平が「葛飾北斎は隠密だった」という奇説の調査を大手出版社に依頼される。
調査は順調に進み、北斎の未発見作と思われる作品も掘り出され、順風満帆かに見えたが……。
1987年日本推理作家協会賞、文春6位
~感想~
まず本作は「写楽殺人事件」の続編であり、文庫版20ページ目で前作のネタバレが余すところなくされているので要注意。
また解説ではおなじみ中島河太郎による本作の完全ネタバレもされており、忙しすぎる現代人もあわせて30ページほどで2作分の内容が把握できてしまうが、絶対試さないように。
内容に戻ると、写楽の正体よりもエンタメ性に富んだ北斎隠密説それ自体が非常に面白く、次から次へと示される傍証や状況証拠(に見えるもの)に驚かされ、読み終える頃には北斎=隠密だと納得させられることだろう。
ビッグネームがごろごろ現れては説自体に絡んできて、歴史好きにはより一層楽しめた。
一方で中盤からは北斎を脇に追いやり、とある事件が描かれ、期待通りに冒頭のボストンでの事件とも絡んでくるのだが、こちらも前作と同じく筋が入り組み過ぎの感はあるものの、様々な思惑が絡み合ったなかなかに読ませるもので、終盤には北斎からも殺人事件からも離れた悲劇が描かれ、哀切ある告白で締められる頃には隠密説もわりとどうでも良くなってしまった。
とはいえ北斎と事件の両輪で最後まで読者の興味を引くことに成功しており、また前作「写楽殺人事件」の後日談としても面白い、力作であることは間違いない。
なおシリーズ完結編となる「広重殺人事件」もあるが、前2作(特に北斎殺人事件)を台無しにするような、危うく椅子から転げ落ちそうになった驚愕のあらすじが書かれており、読んだら全然別物かもしれないが、特にランクインも受賞もしていないし、あえて読まなくてもいいかなと思っている次第である。
18.10.1
評価:★★★★ 8