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ミステリ感想-『鳥居の密室』島田荘司

2018年10月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
2階部分に鳥居の先端が入った奇妙な家で、他殺死体が発見される。
現場は完全な密室で犯人の侵入経路は不明。
さらに2階で眠っていた少女の枕元には、サンタクロースからの贈り物としか思えないプレゼントが置かれていた。
学生時代の御手洗潔が堅牢な謎に挑む。


~感想~
冒頭、京都の街中を百鬼夜行が練り歩き、密室殺人犯とサンタの侵入経路の謎が現れ、若き日の御手洗が電光石火で謎を解き、早くも解決編が始まるのかと思いきや関係者の過去編が延々と描かれる。
むせ返るほどの島田荘司作品感に満ち溢れ、かなりの力技の気配がぷんぷん漂ったものの、過去編であっさり明かされるトリックの全貌はガリレオシリーズの短編で描かれそうなほどに地味。
何よりも歴代作品ではアヌビス神も都井睦雄も鎧武者の亡霊も現物ドーン!だったのに、百鬼夜行はただの幻覚で片付けられたのが実に残念。幻覚なら冒頭に出さないでくれよ…。

御手洗による解決編も、解決編というか答え合わせにとどまり、どんでん返しも特に無いものの、最後はちょっといい話で幕を閉じるため読後感は良好。
とはいえ前半に濃厚に漂う御手洗シリーズ感で恍惚に到れる島田荘司信者には勧められるが、それ以外のごく一般的な読者には取り立ててアピールできる要素がないのも事実ではある。


18.10.19
評価:★★★ 6
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