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ミステリ感想-『遠巷説百物語』京極夏彦

2021年08月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
盛岡藩の遠野保には人と話が集まる。
藩主の密命を受け、士分を捨てた宇夫方祥五郎は、巷に囁かれる妖しい物語を集める。
歯黒べったり、磯撫、波山、鬼熊、恙虫、出世螺……。


~感想~
シリーズ11年ぶりの新作。
全然気づかなかったがこのシリーズは毎回視点が変えられており、今回は趣向をさらに変え、怪異が作られる過程を描いたとのこと。
これだけ長く続いていると、仕掛け人が妖怪を現出させる構成は読者も先刻承知のため、目新しさを出すのが難しくなるが、怪異がどう生まれ、現実の仕掛けがどう怪異として語られるに至ったかに焦点を当てたことで、また新たな面白さが発揮されている。
まさにシリーズ集大成といった趣だが、最終話「出世螺」は連作短編集…というほどではないが連関する本作の物語全てを繋ぎ合わせるために、初見の裏事情と人物が山のように飛び出してきて、はっきり言って全然背景を把握できなかったのは玉に瑕。ちょっと急すぎて強引すぎたと思う。
とはいえ11年ぶりでも往時と一切変わらないクオリティは確かなもので、すでに連載が始まっているシリーズ完結編「了巷説百物語」も今から楽しみでならない。

読了後にはこちらのインタビューもぜひご覧頂きたい。→好書好日 京極夏彦さん「遠巷説百物語」インタビュー


21.8.13
評価:★★★☆ 7
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