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ミステリ感想-『白雪姫の殺人』辻真先

2023年02月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
TVアニメの草創期を担ったアニメーター達が入居する老人ホーム。
制作に携わったアニメにちなんだあだ名で呼び合う彼らの中で、アッコちゃんと呼ばれる老女が白雪姫のお面を付けた首なし死体で発見される。
スナック「蟻巣」に集うポテトやスーパーら名探偵が謎に挑む。


~感想~
作者は鉄腕アトムやサザエさんなどアニメの脚本でも腕をふるい、執筆当時には60歳で、文庫版あとがきでも「自分の体験で年寄りの話が書けるようになった」と私小説めいた一面もあるが、それだけに留まらない…どころか、機知に富みアイデア満載の、企みに満ちた本格ミステリに仕上がっている。
1992年出版だが、現在から見ても目新しい仕掛けがいくつもあり、読者は何度も目をみはることだろう。事件の解決パートで少し残念な部分もあるにはあるが、これだけサービスたっぷりに山盛りのアイデアを振る舞われておいて、文句を付けたら罰が当たってしまう。
シリーズ3作目であり、シリーズファンならより楽しめるだろうストーリー展開もあるが、これから読んでしまってもさほど問題はないだろう。
本格ミステリファンなら機会があればぜひ読むべき、辻真先にしか書くことのできない贅沢な一冊である。

ちなみに作者は本作の16年後に代表作の呼び声高い「完全恋愛」を出し、さらに28年後には「たかが殺人じゃないか」でミステリランキング二冠をかっさらった。現在も執筆を続けているどころかTwitterでミステリはもちろんアニメの感想も元気につぶやいており、悲壮感も漂う本作のあとがきを今読むと非常に面白い。
こんなに長生きするどころか、作家としてのピークがまだ何十年も先だったとは御本人も思わなかっただろうな…。


23.2.8
評価:★★★★ 8
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