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ミステリ感想-『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹

2023年04月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
鳥取の山深くで製鉄業を営む赤朽葉家を中心に栄えた紅緑村。
山の民に置き去りにされ村で育った万葉は、赤朽葉家の頭首タツに見込まれ嫁入りし、千里眼の力で家と村に発展をもたらす。
万葉の娘で札付きの不良の毛毬、何者でもない孫娘の瞳子。三代の女が紡ぐ赤朽葉家の伝説。

2007年日本推理作家協会賞、このミス2位、文春4位、直木賞候補、吉川英治文学新人賞候補

~感想~
赤朽葉家三代の女と紅緑村の年代記であり、背景には昭和の時代や文化が色濃く反映される。
非常に面白く読ませるが、ミステリ馬鹿には「おもしろかった」以外何も言えないガチの文学小説で突き進み、これがなぜ日本推理作家協会賞やミステリランキングを賑わせたのだろうと不思議に思っていたが、終盤に一気に様変わりしガチの本格ミステリが始まって驚いた。
もちろんその間も年代記は続くが期間にすれば前二代と比べごく短く、大半はガチの推理・調査パートに費やされジャンル自体が入れ替わる。その謎は年代記の根幹をつかさどるような魅力的なもので、全てが伏線だったわけではないが、年代記の随所に隠されていた描写から浮かび上がる真相とその解決はまさに本格ミステリそのもの。
女三代の物語のまま突っ走っても全然良かっただろう年代記を、ミステリとして着地させてくれたことには大感謝である。

なお驚くべきことに作中作の「製鉄天使(あいあんエンジェル)」もスピンオフとして刊行されているが、ノリが違うしそれはまあ別にいいかな…。
あと実父が幼女をク○ニする小説こと「私の男」なんかよりこっちの方が百億倍直木賞に相応しかったと思う。


23.4.6
評価:★★★★☆ 9
コメント (2)